第8話

「藤崎〜」



「はいっ」




私のデスクの島を見渡せるところに鎮座する、上司の小野田さんから呼ばれた。




「井村先生の次っていつから動き出しそうなんだ?」



「先週に刷り上がったのをお持ちした時は構想はあるとはおっしゃってました。でも少し時間が欲しいって言われました……」



「そうか。これ、編集部からって持っていってくれ」



「はい、わかりました」




思いがけず、先生の所に行く予定が出来た。

つまりは柾木さんのお店に寄れるかもしれないということだ。

早速、井村先生の予定を確認するために連絡をした。

すると、来週の水曜日夕方ならとのことでアポが取れた。

ドキドキしながら昼休みに柾木さんのお店の営業日を確認すると来週水曜日は奇跡的に営業日と重なっていた。

これは運命なのかもと感じるほど私は浮かれていた。

これでまた来週水曜のために仕事をがんばれる。

ニヤニヤとしてしまいそうな気持ちを必死に抑えて午後の仕事を乗り切った。









「まったく、相手はアイドルじゃないんだからねっ」



「…………だって、仕方ないじゃない」




同期で別の部署の河野亜沙美こうのあさみと仕事終わりに飲んでいて、柾木さんの事を話しているとそんな事を言われてしまった。

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