第9話
大学時代から付き合って4年になる彼氏がいる亜沙美からしたら私の現状はそんな風に感じるのかもしれない。
だって、カフェの店員さんに一目惚れをして、通いつめるものの、"柾木さん"という名前を知った事と、存在を認識してもらえるようになったこと、それ以外には特にこれといって進展もないのだから。
「咲羅の中ではさ、その人に対する気持ちは憧れとか推しとかとは違うんだよね?」
「………違う、と思う」
「じゃあさ、そのイケメンバリスタに思い切って連絡先聞いてみたら?」
「そんな勇気ないよ」
「でも、進まなきゃ何も変わらないじゃない」
「柾木さん見たらそんなこと言えないよ…次元が違う気がしちゃうんだよね…」
「それじゃあ憧れの域出ないじゃない」
「わかってるよ、このままじゃ何も変わらないって。でも失いたくないんだもん、あの時間とか空間を。私にとっては疲れた心を癒す大事な場所なんだもん。一歩動いて柾木さんに拒否されたり、嫌悪感見せられたらもう行けなくなる」
「咲羅……。ごめん、咲羅のペースでいいのにさ、なんか私の方が焦っちゃった。なんかようやく咲羅が恋したって聞いたら今度こそ幸せになって欲しいって思っ、ハァ〜、また余計なこと言った、ごめんっ」
「ううん、亜沙美が心配してくれてるのはわかってるから」
「もう余計なことは言わないっ。けど、いつでも話、聞くからね」
お酒が強い亜沙美が少しほろ酔い気味なのか涙を浮かべて言ってくれた言葉に私もウルッときてしまった。亜沙美があの時の事で私が一歩踏み出すことに躊躇しているのかと心配してくれてるのはわかっている。
私にとって、あれは初めての恋愛だったから。
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