第4話

視線をアイスラテとケーキに向けながらも私の頭に残ったのは、視線を上げた先にいた店員さんの笑顔だった。

あんなにキレイな男の人を見たことがない。

背が高くて、アッシュグレーの髪にクールな目元が笑顔で細められていて、惹き込まれそうだった。





胸がドクっと跳ねたことを誤魔化すようにガムシロを入れたアイスラテをストローで一口、吸い込んだ。

渇いていたから喉にスっと入って、その美味しさに再び意識がそちらに傾いた。

そうなるとケーキも早く食べたい。

フォークで一口分切って、口に入れるとほっぺたがキュっとなるほど酸味と甘味が広がった。

試作品と言って出してくれたケーキは、レモンケーキだった。




「(!このレモンケーキっ、)美味しい……」




子供の頃から私はレモンケーキが大好きだった。だから、レモンケーキと名がついたものを見かける度に食べていた。

なぜなら、私の記憶の中に子供の頃大好きだったレモンケーキがあって、それがどこのケーキなのか思い出せずにいたからだ。





このレモンケーキはその記憶の中の味に似ている。

いや、そのものと言っていいくらいだ。

さらに一口食べると懐かしくて、それでいて気持ちが穏やかになるのを感じだ。

それは、その日仕事で落ち込んだ事など忘れてしまうほどに。





それ以来、すっかり気に入ってしまったこのお店には、二、三週間に一度ほど、近くにある取引先・・・に来る度に寄ることにしていた。

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