第10話

「掴まってください。保健室までなら多分支えられますから」





俺の言葉を一切無視してそう小崎は言った。




意味がわからない。

コイツは俺のことが嫌いじゃないのか?


嫌いなやつにここまで構うものなのか?



小崎に嫌がらせをしている自覚はあった。

だからこそ、コイツの行動に疑問を感じずにはいられない。



が。




「すいませんわたし、この後用事があるんで す。早くしてもらっていいですか」




いつもの小崎には見られない強い口調でそう言われて、思わず彼女の手を取ってしまった。






不本意だ。すごく不本意だ。


いつも馬鹿にしている奴に助けてもらうなんて。



小崎の手に力を込めた途端、一瞬小崎がフラついて、そういえばコイツ、女だったな、なんて思う。




「すいません、大丈夫ですか」




そう言った小崎は慌てて、でも俺を気遣うようにそっと、俺の腕を自分の首に回した。



……ちょっと、なんだよこれ。




そのまま、右半身だけを小崎に預けて保健室まで二人歩く。



小崎は小さくて、俺の肩は右側だけ著しく下がっていた。激しく歩き辛い。

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