第3章 忘れられない夏

夏本番

第1話

「悠人!」


「ああ?」


「悠人!」


「何だよ。」


1-Sの教室で、前の席に座る悠人の背中を叩く。悠人がウザそうに私を睨む。


「暑い!」


「…………窓が開いてんだろ。」


「暑い!」


「………知らねぇ。」


夏本番!って感じの気候に、休み時間の教室で悠人に愚痴を溢す。隣でクスクスと笑う春人を睨む。


「お嬢様には夏はキツいか?」


「春人、誰がお嬢様よ。」


「向日葵しかいないだろ。お嬢様じゃなければ、イチイチ騒ぐな。」


「なっ!春人だって暑いから、そんなにボタンを開けてるんでしょ。」


春人はお腹辺りまでボタンを外している。


「向日葵も外すか?」


「…………、セクハラ。」


私の囁きにクスクスと笑う春人を睨み付けた。


「セクハラ?興味もないな、向日葵の裸なんて。」


「なっ!色ボケ春人!」


私は立ち上がり春人に食って掛かる。前の席に座る悠人が溜め息を吐いている。


「女を抱くのは普通の男だ。悠人も一もヤってる。」


「……………。」


「まさか…………ない?」


春人から離れて自分の席に座り、ニヤニヤする春人を睨み付けた。


「関係ないでしょ。」


「ククッ………、相手してやろうか?」


「はあ?絶対に嫌。」


未だに笑う春人を無視して、窓の外を眺めた。暑い夏のせいか、校庭で遊ぶ生徒が汗をかいている。


「夏か…。」



最近、海に行ってないな………



子供の頃は琉生の家族と一緒に出掛けていた。うちはお母さんが亡くなってから、お父さんは仕事に打ち込み、休みもなく働いていた。


「海に行きたい………。」


小さな呟きが漏れた。


琉生とは行けないだろうな………。


「行くか?」


聞こえてきた声に視線を悠人に向けた。口角を上げて、私を見下ろす悠人を見つめた。


「向日葵、用意は出来たのか?」


「待って、髪だけ縛るから。」


「早くしろ、遅れるぞ。」


朝からバタバタと走り回る私がいた。兄は鞄を持ち、玄関を出ていく。急いで兄の後を追い掛けた。


外に停められたバイクに跨がる兄の後に飛び乗った。ヘルメットを渡され、兄の腰に腕を回した。


「行くぞ。」


バイクがゆっくりと走り出した。私は背中にリュックを背負い、兄の背中にしっかりと掴まった。


暫く走れば、バイクの爆音が聞こえてきた。背後に視線を向ければ、青山兄弟が合流してきた。


「お兄ちゃん、悠人達が。」


大きな声を出しても聞こえているのか分からない。再び、兄の背中にしっかりと掴まった。


「おはよう、悠人。」


「ああ。」


「春人もおはよう。」


「ああ。」


信号待ちで隣に来た二人に挨拶をした。今日の私は上機嫌だ。何故なら…………。

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