第5話

「お兄ちゃんはいつも私を家に閉じ込めて、外にも連れていってくれない。」


「…………。」


「閉じ込めておけば、何も起こらないから?私がどんな気持ちで家に一人で残されているのか………考えた事ある?」


目の前のソファーに座る兄の瞳が私をじっと見据えている。


「友達もいない………、お兄ちゃんは一人で出掛けて、お父さんも仕事…………。一人でどんな気持ちで家にいたか分かる?」


「何かあってからじゃ遅いだろ?だから向日葵を家に置いておけば安心だった。」


「勝手だよ!そんなのはお兄ちゃんの勝手だよ!」


兄の視線が逸らされた。


「悠人達は守ってくれた。ちゃんと守ってくれた。外に出掛けて楽しかったし、悠人達は友達だと思ってる。」


「でも悠人達の役目だ。」


「お兄ちゃん、二度と役目なんて言わないで。悠人達は友達なの。私の事で頭を下げる必要なんてない!」


私の怒鳴り声が部屋に響き渡った。


「向日葵!」


悠人の怒鳴り声に視線を向けた。


「悠人は違うの?」


「…………。」


「友達でしょ?」


私の声が小さくなっていった。私は悠人の瞳をじっと見つめた。


「ああ、友達だ。」


「だったら頭なんて…………。」


「ウエストのルールだ。幹部の女を守るのはウエストのルールだ。友達でも、新さんの妹である向日葵を守るのは俺達の役目だ。」


「悠人?」


「友達なのは変わりない。でもウエストにはウエストのルールがある。言っただろ?向日葵の我が儘は受け付けないって。」


ニヤリと口角を上げた悠人を見つめた。口の端が怪我で切れている。


「新さん、今回はすみませんでした。それと………向日葵、さっきの言葉は嬉しかった。サンキューな。」


照れ笑いをする悠人に頷いた。悠人達にも悠人達のルールがあるんだと。


「向日葵ちゃん、本当に大丈夫だった?」


心配そうな声で鈴音が話し掛けてきた。私は頷き、にっこりと微笑んだ。


「夜の海に行ってきたの。真っ暗な闇の世界って感じだったよ?」


「ええ~、私も行きたかった。」


「今度、琉生君と行ってきて?」


鈴音の瞳が寂しそうに揺れた気がした。琉生の溺愛振りから無理そうなのは目に見えている。


それでも琉生の傍にいるのは、鈴音も琉生を愛してるからだと感じた。


閉じ込めておけば、鈴音は安全だと琉生は考えているに違いない。


「皆でご飯でも食べよう。ねっ?琉生君、皆でなら大丈夫だよね?」


「ああ。」


相変わらず、鈴音にベッタリの琉生に視線を向けた。離したくないのが手に取るように伝わってくる。


「琉生君、ウザくない?」


「ふふっ、ううん、安心する。」


鈴音の幸せそうな笑顔に、私の知らない二人の世界があるんだと感じた。

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