第4話
暗闇の中、3つの光りだけが浮かび上がっている。私は悠人に手を伸ばした。
「私にも。」
その手をチラリと見ただけで、悠人からは反応がない。春人がクスクスと笑っている。
「止めとけ。俺達が新さんに怒られんだろ。」
「だって3人とも吸ってるし。」
「手持ちぶさたなの。向日葵は走ってこい。」
「はあ?こんな真っ暗な中で走ったら転ぶでしょ。」
「シッ!煙草を消せ。」
悠人の小さな声が一気に張り詰めた空気になった。チラリと悠人の視線の先を見れば、数人の人影が見える。
「一、先に帰れ。」
悠人の指示で、一の手が私の手を繋ぎ、人影と反対側に歩きだした。
緊張した空気に、自然と手に籠る力に一の手にも力が籠められる。
「大丈夫だ。」
一の囁きに、一に手を引かれるまま付いていった。バイクの周りにも二人の男が立っていた。
「チッ……、イーストが何で………。」
一の囁きに二人の男を見つめた。チームカラーなのか、腕にお揃いのバンダナをしている。
「向日葵は速攻でバイクに乗れ。」
私は頷くと一が二人の男に向かって走り出した。私は迷わずに、一のバイクの後ろに跨がった。
チラリと一を見れば、二人の男を蹴り飛ばし、バイクに駆け寄ってきている。一の腰に腕を回し掴まった。
一気に加速していくバイクに、必死に一の腰に掴まった。ヘルメットを被る余裕がなく、長い黒髪が風に靡いていく。
「ウエストの街まで一気に行くから、しっかり掴まれ。」
一の大きな声に私は更に腕に力を籠めた。強い風が私の髪を靡かせる。
暫く走れば、急にバイクが停止した。一のヘルメットが私に被せられた。
「一は?」
「俺はいい。行くぞ。」
一がゆっくりと走り出した。チラリと背後を見たが、悠人と春人が来ていない。
クラブ『ウエスト』に戻ってきた。一のヘルメットを脱ぎ、バイクに凭れる一を見上げた。
「悠人と春人は?」
「大丈夫だ。アイツら、滅茶苦茶強いから。」
「イースト?」
「ああ。あの海はサウスの配下だが、俺達と同じで海に来ていたイーストがいたんだな。」
「サウスは大丈夫なの?」
「ああ。サウスは大人しい奴等だ。ただ、イーストだけがウエストの急成長をよく思ってない。」
一が煙草に火を点けた。その紫煙をじっと見つめていた。その時、バイクの爆音に目を向けた。
「悠人と春人が帰ってきた。」
一が口角を上げて、悠人と春人のバイクを見つめた。徐々に近付いてくるバイクに笑みが漏れた。
悠人と春人のバイクが停められ、二人がバイクから降りてきた。近付いてくる二人はちょっと怪我をしているようだ。
「大丈夫?」
「「ああ。」」
悠人達がクラブ『ウエスト』の中に入っていく。私はその後を追った。
「悠人?春人?」
二人の怪我に兄から低い声が吐き出された。兄の視線が私に向けられる。
「向日葵?どういう事だ?」
「新さん、すみません。」
頭を下げる3人に私の眉間に皺が寄っていく。
「何で謝るの?悠人達が悪い訳じゃない。」
「向日葵、お前を危険に晒した。だから悠人達が頭を下げるのは当然だ。」
兄の言葉に私は兄の前に立ち塞がった。
「頭を下げるのは当然?意味が分からない。」
「俺の妹である向日葵を危険に晒したんだ。守るのが役目の悠人達が頭を下げるのは当然だ。」
「守るのが役目?悠人達は友達よ。だから、私に何かあっても頭なんて………。」
「何かあってからじゃ遅いんだよ!」
兄の怒鳴り声が部屋に響き渡った。私はそんな兄を睨み付けた。
「大きな声を出せば、私が納得すると?」
私の低い声が部屋に響いた。
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