新しい友達

第1話

「向日葵、行くぞ。」


「分かった。」


悠人に呼ばれ、鞄を手に持ち、悠人の後を付いていく。最近、いつも一緒にいるのは青山悠人だ。


女が苦手な悠人だが兄達に頼まれたのか、お昼も帰りの時もいつも一緒にいる。


「『ウエスト』に行く。」


「鈴音さん?」


「ああ。向日葵を連れてこいって。」


「ふ~ん。」


何故か鈴音さんには凄く気に入られている。私としては琉生と仲良く座る二人を見るのは嫌なんだけど。


チラリと悠人の視線を感じ、悠人を見上げた。


「向日葵は琉生さんが好きなのか?」


「そうよ。」


「じゃあ、彼女の鈴音さんは憎い?」


悠人の言葉に頭の中で考えてみた。


私は鈴音さんを憎んでる?


「別に憎んではいない。鈴音さんは私にとっても、初めて対等に接してくれる友達でもあるから。」


今の私の回答はこれだ。鈴音さんはいつも優しく私に接してくれる。


「恋敵だろ?」


「恋敵って言える?琉生君は鈴音さんしか見えてないのに。私の負けは見え見えでしょ。」


「ククッ………、意外に分かってんだな。我が儘を突き通すタイプかと思ったが?」


クスクスと笑う悠人を睨み付けた。


「我が儘なんて言ったら、お兄ちゃんに怒られるの分かってるの。伊達にずっと一緒にいないから。」


「新さんか。ブラコンなのかよ。」


「そうよ、悪い?」


「別に悪くない。」


悠人のバイクの後ろに跨がった。ヘルメットを無理矢理被せられ、悠人の背中を叩いた。


「優しくしなさいよ。」


「はあ?知るか。」


悠人の肩に掴まれば、バイクを吹かし、ゆっくりと走り出した。後ろには、春人と一が付いてくる。


何故かヘルメット越しに見える二人のニヤニヤと笑っている目に首を傾げた。


「何を笑ってんのよ。」


私の呟きはバイクの爆音に消されていった。


「ありがとう、悠人。」


「ああ。」


悠人のバイクから降り、悠人達と『ウエスト』にあるいつもの部屋を目指す。


「最近、悠人と向日葵の噂が凄いの知ってるか?」


「噂?」


前を歩く春人に視線を向けた。悠人にそっくりな顔で私を笑いながら見ている。


「悠人と向日葵が付き合ってる。」


「…………何で?」


「一緒にいるからだろ。」


チラリと悠人に視線を向ければ、気にしている感じはない。私はもう一度春人に視線を向けた。


「噂よ。悠人って女が苦手なんでしょ?」


「でもヤる事はヤってる。矛盾してるよな?」


「ふ~ん。春人は女が苦手なの?」


春人の手が私の肩に伸びてきて、私を抱き寄せた。眉間に皺を寄せて見上げれば、ニヤリと口角を上げた。


「俺は悠人とは違う。なんなら、俺が向日葵といつも一緒に………。」


「春人!」


悠人の低い声が響き渡った。春人は笑いながら、私の肩から手を退けた。


「春人、親父に言うぞ。」


「冗談だろ。」


二人の会話にじっと二人を見据えた。


「親父?誰の?」


「向日葵のだろ。うちの組の顧問弁護士だから、向日葵の親父とは知り合いなんだよ。」


「…………そう。だから私のお守りなんてしてるのね。それは悪かったわね。」


私から吐き出されたのは低い声だった。結局は親の仕事のために一緒にいるんだ。


二人から視線を逸らし、前に進もうとしたが………。


「向日葵、別に親のためじゃないからな。」


悠人の手が伸びてきて私の腕を掴み、漆黒の瞳が私を見据える。


「お前が気に入ってるから、俺達は一緒にいる。」


「気に入ってる?」


「俺達に色目を使うんじゃなく、ただ新さんの友達としての俺達を見てくれてるのが分かるから。だから一緒にいる。」


「色目?何で悠人達に。」


「それだ。他の女は色目でしか俺達を見ない。だから向日葵と一緒にいるんだ。」


悠人の手が私から離れていく。

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