第5話

「俺が守る。鈴音は俺が守る。」


鈴音の耳元で囁けば、鈴音の視線が俺に向けられる。


「ちゃんと守ってやる。」


「琉生、甘いんだよ。そんな簡単なもんじゃないだろ!」


新の怒鳴り声に、鈴音の肩が大きく揺れた。俺はそれでも更に鈴音を抱き寄せた。


「絶対に守ってやる。鈴音、俺を信じて傍にいろ。」


「琉生さん?」


「琉生だ。俺の女になれ。」


新がソファーから立ち上がる音が聞こえてきたが、それでも鈴音に囁き掛けた。


「鈴音、俺の女になれ。」


「琉生!」


「分かりました。」


鈴音の言葉に、身体を少し離して鈴音の顔を覗き込んだ。初めて見る彼女の笑みに、俺は強く鈴音を抱き締めた。


「鈴音。」


「琉生。」


鈴音のふんわりとした雰囲気が部屋を支配していく。新もソファーに腰掛け、大きな溜め息を吐いていた。


「鈴音さん、分かってるのか?琉生の女になるって事はイーストの奴等に狙われるって事だ。」


「イースト………。」


「ああ。イーストは危険なチームだ。ウエストの急成長をよく思っていない。」


隣で新の話を真面目に聞く鈴音に視線を向けた。だが、鈴音の瞳に怯えは見えない。


「ウエストより優位に立ちたいイーストは絶対に弱点になる鈴音さんを狙ってくる。だから俺達は女を作らなかった。」


「えっ?私が初めて?」


「今の幹部の女は鈴音さんだけだ。」


鈴音の視線が俺に向けられる。


「初めて?」


「ああ。今まで女は作らなかった。」


「私なんかじゃ……。」


「いや、鈴音だからだ。初めて逢った日から忘れられない女なんて初めてなんだ。こうやって隣にいるだけで、なんか心が穏やかになる。」


鈴音を抱き寄せ、頭にキスを落とした。大きな溜め息が前に座る新から聞こえてきた。


「っで、鈴音さんの覚悟は?」


「………琉生、信じていい?」


「当たり前だ。」


鈴音の言葉に即答した。


「だったら琉生を信じる。私も初めてだから。」


「初めて?」


「周りに流されずに、私自身を見ようとしてくれた人。噂を信じず、俺が決める事だって言ってくれて嬉しかった。」


俺に向けられる暖かみのある笑みに、俺は心が満たされていくのを感じる。


「琉生を信じてみたくなった。」


「ああ。」


「分かった。琉生、鈴音さんを守ってやれ。ウエストも鈴音さんを守ってやるから。」


新を見れば、諦めた顔で俺達を見ていた。


「向日葵、怒るぞ?」


「向日葵?」


「新の妹。俺にとっても幼馴染み。」


「向日葵は琉生が好きだ。だから鈴音さんも向日葵の嫉妬には覚悟しておいて。」


鈴音の視線が突き刺さるのを感じた。


「俺には妹だ。きっと向日葵も恋愛感情を勘違いしてるだけだ。」


「勘違い?」


「小さな頃からずっと守ってやった。だから憧れと恋を勘違いしてるだけだ。」


俺は新に視線を向けた。


「新、一緒に守ってくれるか?」


「仕方ない。琉生、しっかり守ってやれ。」


「ああ。」


「向日葵には俺や青山兄弟が付くから。」


「ああ。」


俺は鈴音の髪に顔を埋めた。甘い香りに目を閉じた。



『興味もない。』



俺に向けられた軽蔑の瞳、同時に吐き出された冷たい声。そんな女が俺は忘れられなった。


初めて興味を持った女に出逢った。これが運命ってモノなかのかは分からない。


ただ一緒に居たいと思った女に出逢えた。


「鈴音。」


「何?」


「傍にいてくれるか?」


「嬉しかったって言ったでしょ?噂にも耳を貸さず、俺が決める事だって言ってくれた。あの言葉は凄く嬉しかった。」


出逢った頃とは違う穏やかな笑みを見せる鈴音に、心が囚われていくのが分かった。

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