第4話

「私には関わらないで。それとも彼女とグルなの?」


冷たい声に俺はじっと椎崎鈴音を見据えた。


グル?


「私を陥れたいの?」


俺の手を振り払い歩き出す鈴音の前に立ち塞がった。鈴音の冷たい瞳が俺を見据える。


「俺の女になれよ。」


「………嫌よ。遊びなら他の女を探して。」


「遊びじゃない。」


「泥棒猫。」


声の聞こえてきた方向に視線を向ければ、見覚えのある女が嫉妬で歪む顔を鈴音に向けていた。


女は隣に立つ男の肩を叩き、鈴音にクスリと笑みを向けた。


「椎崎さんの元彼、やっぱりユウが良いんだって。椎崎さんって……つまらない女だって言ってたわよ。」


鈴音に視線を向ければ、拳を強く握り締め、じっと女を見据えていた。


「見た目だけよね?もっと男を楽しませる努力でもしたら?そうすれば、捨てられる事もないのに。」


女と女の友達らしい数人の女がクスクスと笑っている。


「琉生さん、椎崎さんはつまらない女よ。相手にするだけ時間の無駄………。」


「二度と顔を見せるなって言ったよな?」


俺の低い声が女の笑い声を掻き消し、女達を鋭い視線で黙らせていく。


「つまらない女?そんな事は俺が決める事だ。」


「興味はないって………。」


「あの時まではな。今は鈴音を俺の女にする事に決めたんだよ。」


鈴音の腕を掴み、女達に近付いていく。俯く鈴音の肩を抱き寄せた。


「元彼ね?見る目のない男だ。どうせ女達に何か吹き込まれて別れたんだろ?」


「………ッ………。」


男の瞳が動揺にキョロキョロと動いた。俺は口角を上げて、愉しそうに男を見た。


「別れてくれて助かったよ。まあ、奪うだけだったが。鈴音は俺がもらう。」


「ちょっ…………。」


「鈴音、俺にしておけ。幸せにしてやる。」


鈴音が目を見開き、俺を見上げてきた。俺はニヤリと鈴音を見下ろした。


「今後、鈴音に手を出した奴はウエストの標的する!手を出すなら、覚悟してから出せ!」


校庭に響き渡るような声を張り上げた。息を飲む音に周りを見渡せば、その場に固まる奴等にクスリと笑みが漏れた。


鈴音の肩を抱き寄せ、俺は校門から出ていった。近くに停めてあったバイクに跨がった。


「鈴音、乗れ。」


「…………。」


「それとも………あの中に戻るのか?」


顎で示せば、鈴音がチラリと俺の示す方向を見た。大勢のギャラリーが俺達の噂をしている。


「乗るのか、戻るのか、決めろ。」


「…………乗るわ。」


大きな溜め息を吐いた鈴音が俺からヘルメットを受け取った。それを被り、俺の後ろに跨がった。


「掴まれ。行くぞ。」


無言で俺の腰に腕を回した。初めて感じる鈴音の体温に心臓の音が煩い。俺はバイクを吹かし、溜まり場であるクラブ『ウエスト』を目指した。


俺が鈴音の手を繋ぎ、いつもの部屋に入れば、突き刺さる視線を感じた。そのままソファーに腰掛ければ、鈴音も隣に腰掛けた。


「琉生、どういうつもりだ。」


新の低い声が静かな部屋に響いた。俺は新に視線を向ければ、鋭い視線を向けていた。


「俺の女にする。」


「遊びか?それとも………。」


「本気だ。」


新から大きな溜め息が漏れた。新の鋭い視線が鈴音に向けられた。


「椎崎鈴音さん?」


「はい。」


「琉生の女になるのか?」


「…………。」


「琉生はウエストの幹部だ。その女になるって事はウエストの弱点になるって事だ。その意味が分かるか?」


新の低い声が鈴音に向けられる。鈴音は何も答えず、じっと新を見据えている。


「狙われるって事だ。その覚悟があるのか?」


「狙われる?」


鈴音の小さな呟きが漏れた。俺は鈴音の肩を抱き寄せた。

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