第2章 新しい世界

ウエスト

第1話

変な感じだ。琉生の彼女と友達になるなんて。


「向日葵ちゃんは何が好き?」


「琉生。」


一瞬、大きな瞳を更に大きく見開いた鈴音がクスリと笑った。


「向日葵ちゃんは琉生が好きなのね。でも琉生だけは譲れないから。」


「分かってる。琉生君も鈴音さんしか見てない気がするし。」


こんな嫌みにも笑顔で返す鈴音を最近は認め始めている。だって琉生にも………。


「向日葵、鈴音を苛める事は許さないからな。」


「はいはい。」


「向日葵、二度と鈴音を傷付けるな。次はないからな。」


低い声で私に話し掛ける琉生の瞳は真剣で、冗談じゃない事が分かる。


私は大きく溜め息を吐いた。


「分かってる。私も琉生君を好きだったのに。」


「向日葵は妹だろ。お前も勘違いしてるんだろ。その内、本気の男が現れるさ。」


笑いながら話す琉生に溜め息しか出ない。私の本気が全然伝わらない。


「聞いてる?向日葵ちゃん。」


思考が違う所に言っていた私は鈴音の声に我に返った。目の前の鈴音の瞳が寂しそうだ。


「私の相手はつまらない?」


「ううん、違う。ちょっと考え事を………ごめん。」


「謝らないで。ほら、私って真面目過ぎなのか、友達に面白くないって………。」


寂しそうな瞳が自分と重なる。私もずっと女友達はいなかった。恋敵と言えど、鈴音さんは憎めない人だ。


「私も女友達がいなかったから、話が面白くなくて………ごめん。」


「ううん、私こそ。」


鈴音の優しい雰囲気が心を和ませる。きっと琉生も鈴音の雰囲気を好きになったんだろう。


「琉生君は鈴音さんの雰囲気を好きになったんだね。」


「えっ?」


「心が和む。そんな雰囲気を好きになったんだね。」


隣に座る琉生に視線を向ければ、鈴音をじっと見つめている。


「琉生君は本当に好きなんだね。」


琉生の視線が私に向けられる。


「ああ。」


「出逢いって何?一目惚れするような出逢いって。」


「…………。」


沈黙の琉生から鈴音に視線を向けた。苦笑いをする鈴音に眉間の皺を寄せた。


「言えない?」


「琉生の女絡みだから。」


琉生に視線を戻し、じっと琉生を見つめた。琉生はソファーに凭れ、鈴音を抱き寄せた。


「俺の遊び女が鈴音と同じ学校で、街中で鈴音を見掛けて、大人しい鈴音に絡んで行ったんだ。」


「それで?」


「大人しい癖に、鈴音の瞳だけは力強いモノがあった。女と一緒にいた俺に向けられた軽蔑の瞳………。今でも忘れられない。」


「……………。」


「初めて鈴音に向けられた瞳が忘れられなくて、鈴音が気になって仕方なくなっていった…………。」


琉生の視線が私から鈴音に向けられた。彼女の髪を優しく撫でる琉生を見つめていた。

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