第3話
「新さん、こんにちはっす。」
「ああ。」
兄に連れられ着いた場所は繁華街の中にあるクラブのようだ。今は昼間という時間帯もあり、営業していないようだ。
二階に上る階段を兄について上っていく。馴れたように一つの扉を開けて入っていく。
「琉生、悪いな。」
「いや。」
琉生は中にいるようだ。私は部屋の中に足を踏み入れた。ソファー席に座る琉生と………。
「向日葵、俺の彼女の鈴音。椎崎鈴音(しいざき すずね)。」
「…………。」
「初めまして。向日葵ちゃん?」
琉生に肩を抱かれ、ソファーに腰掛けていた鈴音が立ち上がった。
私より少し高めの華奢な身体で、茶色の髪を腰辺りまで伸ばし、大きな瞳を私に向けている。
「鈴音です。琉生とは同じ年なの。」
「琉生………。」
「新さんの妹って聞いたんだけど?」
優しそうな雰囲気を醸し出す鈴音をじっと見つめた。
派手なメイクも、派手な服装もしていない。ギャルってよりは普通の高校生だ。
琉生が惹かれた部分が分からない。
「琉生君は鈴音さんの何処を?」
「一目惚れ。」
「………はあ?」
琉生の言葉に変な声がでた。琉生は鈴音を抱き寄せ、頭にキスを落とした。
私はじっと二人を見つめた。
「一目惚れ?」
「ああ。」
「一目惚れで本気の女?」
「ああ。」
琉生に肩を抱かれ、ソファーに腰掛ける鈴音に近付いていった。鈴音の前に立ち、彼女を見下ろした。
「琉生君の顔?それとも金?それとも………ウエストの幹部だから?」
「…………。」
「琉生君を誑かして、何を手に入れたいの?」
私の低い声が彼女に向けられる。目の前に座る鈴音の視線は私から逸らされる事はない。
私の冷たい瞳にも、真っ直ぐに見つめ返す鈴音をじっと見据えた。
「目的は?」
「向日葵!何を………。」
「私を守ってくれるって言う彼の言葉を信じてみたいと思った。」
琉生の言葉を遮り、私を見据え返す鈴音に口角を上げた。
「守ってやる………?琉生君は誰でも守るのね?」
「えっ?」
「鈴音さんだけを守ってやるって?琉生君も残酷よね?」
鈴音の瞳がユラユラと揺らめき始めた。
「向日葵!」
「琉生くん、私にも言わなかった?」
鈴音の隣に座る琉生に視線を向けた。私を睨み付ける琉生に目を見開いた。
初めて向けられる琉生の冷たい瞳に言葉を失っていく。
「向日葵、二度と顔を見せるな。」
琉生の冷たい声、冷たい瞳に心も体も凍り付いていく。
「琉生……くん…?」
「向日葵、お前に言っておく。この先、俺が守るのは鈴音だけだ。」
私の瞳から大粒の涙が流れ落ちていく。琉生の冷たい瞳は変わらず向けられている。
「俺が守るのは鈴音だけだ。覚えておけ。」
「琉生くん?」
「二度と顔を見せるな。新!」
琉生の視線が私から逸らされ、隣に座る鈴音に向けられる。その瞳は優しいモノとなっていた。
「鈴音、お前だけだ。」
琉生の優しい声、優しい瞳が鈴音に向けられる。琉生の本気の女…………。
琉生は鈴音さんに本気なんだ。
頬を伝う涙を拭った。私は背を向けて、扉に向かって歩みを進めた。
「バイバイ、琉生くん…………。」
静かな部屋に響き渡る私の声が小さく吐き出された。私は部屋を出ようとしたが…………。
「待って!向日葵ちゃん、待って!」
背後から聞こえてくる大きな声に鈴音に視線を向けた。ソファーから立ち上がった彼女が私をじっと見つめていた。
「向日葵ちゃん、友達になってくれない?」
予想外の言葉に誰もが口を閉ざした。
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