第43話

しかし何だろう。やっぱり富井くんの隣を歩くのは落ち着かない。

私がいくらお洒落しようと釣り合ってる感ゼロだし。


……私が気にしすぎなのかなあ。


でも同じイケメンでも斉藤さんの隣を歩くのは違和感なかったな。

と、自販機にジュースを買いに行ったあとほんの少し、隣で歩いた日のことを思い出す。


まああのときは隆二もいたし、家のすぐそこだったからっていうのも大きい。

あと斉藤さんは実際おじさんで且つじじくさいってことも大きい。



「あ、あったあった。あの建物だよ百合ちゃん」

「あ、うん」



列ができた建物を指差されてはっとした。



「列びにいこう」



駄目だ駄目だ。


今一緒にいるのは富井くん。

他の人のことばかり考えるのはいくらなんでも失礼だ。

富井くんのことを考えておこう。



……いや、でも。やっぱり頭から離れないのだ。

斉藤さんの「可愛いですね」が。


妙に、どきどきする。


何故だろう。

富井くんの「可愛い」にそんな魔力はなかったのに。



もしかしたら斉藤さんの「可愛いですね」は小動物に感じるような可愛いかもしれないし、いや私そんなに愛らしくないけども。


もしかしたら妹とか小さい子に感じるような可愛いかもしれないし、だって私年下だし。


でも富井くんの「可愛い」は明らかに女としての可愛いを言ってくれてて。


なのに、なのに。



あ、富井くんの「可愛い」は免疫ができてたのかな。

そうかそうか、そうだったのか!



「ねー、百合ちゃん」

「はいっ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る