第41話

うん、そう言ってほしかったんだけど。

言われたら言われたで、恥ずかしすぎてどうすれば良いのか分からなくなる。



「前原さんこんなちゃんとした服も持ってたんですか?」

「私の服貸してあげたんです。今日この子、デートだから」



隣でちっちが答えた。



「デート……?前原さんが……?」



信じられない、と目が言っている。

私だっていまいち信じられないくらいなんだから、斉藤さんは尚更だと思う。



「良い友達がいて良かったですね。デート頑張ってくださいね」



斉藤さんはそう言って玄関に鍵をかけると、私とちっちの横を通り過ぎて行った。



「すごい、モデルさんに会っちゃったー。やっぱ足長いね顔小さいねー」

「可愛いって言われた可愛いって言われた可愛いって言われた……」

「まえほっぴー?」



斉藤さんの「可愛い」が、声のトーンや間合いまできっちり記憶されるレベルで、頭にびしっとこびりついてしまった。

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