目指すは主食系男子

第7話

「あ、前原さん」

「ああ、斎藤さん。おはようございます」



翌朝、家の下で斉藤さんと遭遇した。


まだ着替えていないのか、じじくさいジャージを着ていて、うっすら髭が生えている。



「おはようございます。前原さんは前原家のゴミ出し係りなんですね」



斉藤さんは眠そうな目で、私の持つゴミ袋を見て言った。


相変わらず柔らかい笑顔だ。



「ご名答です。昨日はどうもありがとうございました」

「いえいえ。こちらこそありがとうございましたお味噌。僕がいつも使ってるやつより高い味がしました。美味しかったです……何キョロキョロしてるんですか?」



私がゴミ捨て場にゴミ袋を捨てて、同じく斉藤さんもゴミ袋を捨てたあと、首を傾げて私を見る。



「いえあの、昨日落とした鍵、どこ行ったのかなあって」



結局鍵は見つからなくて。

昨日お父さんにゲロ怒られて、お母さんと弟はそんな私を楽しそうに見ていた。腹立つ。




「それより、斎藤さん今日はお休みですか」



気を紛らすように話を変えてみた。



「はい。明日も休みです」

「……あまり仕事ないんですね」

「やめてください」



にこやかな笑顔が逆に怖い。



「じゃあ、行ってきますね」

「行ってらっしゃい」



ぺこりと下げた頭を上げると、斉藤さんはゆらゆらと手を振っていて、ああこんな感じの人なんだ。と何故か可愛く感じてしまった。


そんな自分が妙にむず痒かったので早足で駅に向かった。

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