第6話

斉藤さんがお隣にやって来て、三ヶ月。


初めてお隣さんがモデルだと知ったときは、夜通しパーティーの騒ぎ声とか女の人の喘ぎ声とか聞こえるんだと覚悟した。

失礼ながら。



「どういうことなんですか。モデルさんなんて女喰いまくりなんじゃないんですか」

「それは人によるでしょう」



てっきりモデルなんて皆チャラ男なのかと思っていた、今斉藤さん家の山積みポテチを見るまでは。


そうか、こういうタイプもいるのか。



「まあ僕だってモデルですから女の一人や二人食い放題ですよ。日替わりですよ」

「一秒でバレる嘘つかないでください」

「……はい」



私がクスクス笑っていると、斉藤さんは恥ずかしそうにはにかんだ。



近所付き合いとか、挨拶だけしておけば良いと思っていたし、斉藤さんはモデルだから尚更会話なんてし辛いと思っていたけど、いざ話してみるとなかなか楽しいかもしれない。斉藤さんは。


大して仲良くないクラスメートとかより遥かに話しやすい。おじさんくさいからか。




「あの、お電話借りれませんか」

「あ、良いですよ」



立ち上がって子機を取ってきてくれた。それを受け取ってから、気付く。



「……番号、覚えてない」

「……でしょうね。会社の番号なら調べたら出るんじゃないですか?調べます?」

「あ、なるほど」



斉藤さんはズボンのポケットからスマホを取り出した。



「すみません何から何まで」

「いえいえ、その代わりといっては何なんですけど、家空いたら味噌分けてもらえませんか。金欠で買えなかったんです」

「ああもう、どうぞどうぞ」

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