第6話竜と少女


「ああ。リリーじゃないか、見回りに見つかってしまうから、静かにね。」

「私、あなたと出会ったこと忘れてた。あんなに救われたのにッ、こんなにもすきなのに、ごめなさい、本当にごめんなさいッ」

「いいんだよリリー。もともとあちらの人間は、こちらの記憶をなくしやすい。何度も行き来しないようにね。」

「そうなの?私、何度も来たい!離れ離れはいや」

泣き出してしまうリリーをウィンドルはしばらく傍観したが、そっと尾で背中を押して胴体部分で抱きしめた。

「リリー、お前…顔を見せておくれ、よく見れば頬が腫れている。喉にもアザがある、首にも……。」りりーは少し躊躇ったが袖と裾を捲り、傷跡やアザをあらわにした。決して美しいとは言えない体、これを見せたらウィンドルは自分を嫌うかもしれない。でも、見せろと言えば見せる。涙をためて、体は震えていた。

「こんな…誰がこんな酷いことを」

「学校の人たちと、父さんと母さん。母さんはね、私が6歳の時に死んじゃったから、今のお母さんとは血は繋がってないけど。」

力の抜けた笑顔をウィンドルに向けると、彼は鱗を激しく揺すらせ、また怒りから喉も鳴らした。

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