第13話
具合が悪い時は喋ることさえままならず、子供のような喋り方をしたり、うわごとを繰り返したりしてしまいます。病気の治療の影響や、薬の副作用が出ているようです。
キャロルはそういう状態なのでティナへ「マークが最近面倒をみてくれない、冷たくなった」などと、言いつけることができません。うまく説明できないのです。キャロルが直にマークへ不満を述べるのも難しくなってきました。
しかしある日、キャロルは珍しく体調の良い日がありました。弱々しく小さい声ではありますが、普段より喋れそうな感じなのです。
キャロルはいつものようにお願いごとをする為、マークを呼びました。面倒臭がりながらやって来たマークに、キャロルはちょっとだけ聞いてみることにしました。
「マークや。最近あたしのところへ直ぐに来てくれなくなったじゃないかい?どうしてだい?」
マークはやる気なさそうに「そんなことないと思うけど......」と答え大きくため息をつきました。
「もう、私と話をするのも面倒なんだねえ......」悲しくなったキャロルは小声でつぶやきました。
「えッ?何ッ?なんか言った?」マークはぶっきらぼうにききました。
「いやいや、何でもないよ......あー、薬を飲もうと思うんだけど、水がなくなってるんだ。悪いけど、水を持ってきておくれ」とキャロル。マークはふてくされて返事もせずに、ブツブツ言いながら水を取りに行きました。
マークがキャロルの部屋に戻って水を渡すと、キャロルはお礼を言いました。
「マークや。ありがとうよ。あたしゃオマエがいないと、本当に何もできなくてねえ......」
しかしもはや、こういうお礼の言葉がマークの心を動かすことはありません。
キャロルはせっかく体調が良かったので、マークとお話でもしたかったのですが、マークは話しかけるのもはばかれるような雰囲気です。キャロルは悲しくて寂しくて涙が溢れそうになりましたが、グッとこらえました。そしてマークに
「ありがとうよ、マーク。もう自分のお部屋に戻っていいよ」
とだけ言いました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます