第13話

具合が悪い時は喋ることさえままならず、子供のような喋り方をしたり、うわごとを繰り返したりしてしまいます。病気の治療の影響や、薬の副作用が出ているようです。



キャロルはそういう状態なのでティナへ「マークが最近面倒をみてくれない、冷たくなった」などと、言いつけることができません。うまく説明できないのです。キャロルが直にマークへ不満を述べるのも難しくなってきました。



しかしある日、キャロルは珍しく体調の良い日がありました。弱々しく小さい声ではありますが、普段より喋れそうな感じなのです。



キャロルはいつものようにお願いごとをする為、マークを呼びました。面倒臭がりながらやって来たマークに、キャロルはちょっとだけ聞いてみることにしました。



「マークや。最近あたしのところへ直ぐに来てくれなくなったじゃないかい?どうしてだい?」



マークはやる気なさそうに「そんなことないと思うけど......」と答え大きくため息をつきました。



「もう、私と話をするのも面倒なんだねえ......」悲しくなったキャロルは小声でつぶやきました。



「えッ?何ッ?なんか言った?」マークはぶっきらぼうにききました。



「いやいや、何でもないよ......あー、薬を飲もうと思うんだけど、水がなくなってるんだ。悪いけど、水を持ってきておくれ」とキャロル。マークはふてくされて返事もせずに、ブツブツ言いながら水を取りに行きました。



マークがキャロルの部屋に戻って水を渡すと、キャロルはお礼を言いました。



「マークや。ありがとうよ。あたしゃオマエがいないと、本当に何もできなくてねえ......」



しかしもはや、こういうお礼の言葉がマークの心を動かすことはありません。



キャロルはせっかく体調が良かったので、マークとお話でもしたかったのですが、マークは話しかけるのもはばかれるような雰囲気です。キャロルは悲しくて寂しくて涙が溢れそうになりましたが、グッとこらえました。そしてマークに



「ありがとうよ、マーク。もう自分のお部屋に戻っていいよ」


とだけ言いました。

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