第6話
そのうち3人が乗った車がレストランに到着しました。またひと苦労して車からキャロルを降ろしてあげると、キャロルは マークの腕にもたれかかりました。マークはキャロルを自分の腕で支えながら、駐車場からレストランの中まで歩いて行きました。マークが気にかけていたのは、実はこのことだったのです。
マークがこうやって、キャロルを支えながら歩くというのは、いつも家でやっていることです。でもこの姿をレストランにいる他のお客さん達に見られるかと思うと、マークは憂鬱で仕方ありませんでした。
「レストランに来てるよその子ども達にからかわれるんじゃないだろうか?大人の人達はからかいはしないまでも、こっそりクスクスと笑ったりしないだろうか?」と心配してました。マークにとって人前でお婆さんを支えながら、一緒に歩くのはとても不格好で気恥ずかしいことに思えたのです。
「(かと言ってマミィに『代わって』と頼むと、せっかく今日楽しそうにしているグランマを傷つけてしまうかもしれないし......)」
マークの心の中には「恥ずかしくて絶対に嫌だ!」という気持ちと、キャロルを気づかう優しい気持ちとが複雑に混ざり合っていました。
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マークはキャロルお婆さんを連れて、いよいよレストランの中へ入って行きました。マークは恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になり、うつむきながらキャロルを支えて歩いて行きました。それからマークは恐る恐る目線を上げチラッと辺りを見回しました。するとどうでしょう。そこにはマークが生まれてからこれまでに、見たことのないような光景がありました。その光景とは......
まずは、レストランの入り口に一番近いテーブルで、気難しそうな顔をしたおじさんが1人で食事をしていました。そのおじさんが、マークとキャロルが一緒にレストランに入って来たのを見た途端、気難しい顔を一瞬にして笑顔に変えました。おかしくて笑った笑顔や、ニヤニヤした笑顔ではありません。お婆さんを一生懸命支えて歩いているマークを見て、優しくニコニコと微笑んだ笑顔でした。
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