4話
私は迷わず速度を上げ続け先生達を次々と追い越した。
「……っ!?こら!!桜井さんは来ちゃいけません!!!」
高速度で飛ぶ私に気づいた黒沼先生が私を叱った。
(先生ごめんね……!)
私が高度を上げても麻雀ヤンキーとの距離は余り縮まらない。
……箒の動きが読めない!!
どうして乗りこなせないのにスピード出すんだよ!!
速度を上げ続けてると箒からミシミシと云う嫌な音が聞こえてきた。
「っ!!」
(……この箒は支給で質が良くないから考え無しに魔力を送ると壊れちゃうのか……。)
このままだと麻雀ヤンキーの箒が壊れちゃうのも時間の問題なので私は箒にしっかり補強魔法を掛けた上で更に速度を上げ、麻雀ヤンキーにもう少しで捕まえれそうな所までジワジワ近づいた。
……ヤンキーの箒からは木の破片らしきものがパラパラと落ちて来て非常に不味い。
この子の魔力量はきっと同世代より有るな……いい事だけど今だけ非常に面倒!
スゥ……
「ねぇ!!ちょっとこっち向きなさい!!」
「……っ!!?」
声が届く所まで近づけたので怒鳴ってみたらヤンキーはギャグ漫画みたいな涙と鼻水を垂れ流しながら此方を向いた。
(汚っ!!)
私は思わず、緊迫感のある場面なのに思わず引いた……。
「こっちに手を伸ばしなさい!!」
ヤンキーは素直に私に手を伸ばす。
あともう少しで手が届きそう……!
バキンッ!!!
でも箒がとうとう壊れてしまった。
「ギャーーーーーーーーーーーッ!、!!!!、?!!、!」
ヤンキー追い掛け急降下
更にスピードが上がっている筈なのにヤンキーの手を掴むことがなかなか出来ない……。
まどろっこしい!!
地面まであと、
10……9……8……7……65432──!!!!、!
───────
「貴方達はどれ程危険な事をしたか理解してますか!?」
「ごめんなさぃ…………!」
「理解はしてますよ。」
「桜井さん!!貴方も問題児になる必要はありません!!」
私はあの後無事にギリギリだったけど、麻雀ヤンキーをなんとか捕まえる事が出来て怪我を出さずに済んだ。
でも麻雀ヤンキーは恐怖のあまりにお漏らしをしてしまったので保健室に黒沼先生と一緒に連れて行き、麻雀ヤンキーが着替え終えた後に
今ガッツリ叱られている……。
私、別に悪くない……隣のアホ麻雀ヤンキーが先生達の云うことを聞かずに飛んだのが悪いもの。
「今回は奇跡的に怪我人が出ずに済みましたがっ!これは結果です!もう二度と危険な事をせず先生に任せなさい!!」
麻雀ヤンキーはすっかり落ち込んで反省してるようなので、
黒沼先生は堂々として一切悪びれる様子が無い私に叱り始めた。
腑に落ちないわ…………。
「貴方達は放課後に反省文を書いて貰いますからね。」
黒沼先生はそう言うとプンプンしながら保健室を出ていった。
「「…………。」」
何だか気不味い雰囲気になったわ……。
そういえば時間的にもう昼休みか。
「ねぇ、お腹が減ったから食堂行きたい。案内してくれない?」
今から玲くんを探すのも面倒な私は隣の麻雀ヤンキーに話しかけた。
「…………別に良いけど……怒んねぇの??」
麻雀ヤンキーはおずおずと聞いてきた。
「お漏らしする様なお子ちゃまに怒る人はこの世に居ないわ。」
「…………お前いい性格してるな……。」
「褒めてくれてありがとう。でもその前に命の恩人である私に言うことがあるでしょう?」
「助けてくれてありがと……そしてごめんなさい……。」
麻雀ヤンキーは意外にも素直な性格だった。
「良いよ!許すから食堂に案内して?ウジウジしてたら時間が無くなっちゃう。」
麻雀ヤンキーと一緒に食堂に行ってみたら昼休みが始まって結構経ってるのに混んでいた。
どうやら曜日毎にメニューは決まっているらしく学生は無料で食事でき、
おかわりも自由に出来るみたいだ。
今日は月曜日で
ミートパスタと春雨サラダ、そしてデザートにオレンジゼリーだった。
飲み物は牛乳と緑茶で好きな方を選べるらしく私は緑茶を選んだ。
麻雀ヤンキーと席に座りふと私は思い出した。
「そういえばあなたの名前、聞いてなかったわ。」
「あぁ、俺は浅木青都、よろしく。」
「桜井暦です。好きに呼んで良いよ。」
自己紹介してくれた麻雀ヤンキーこと蒼都は体中いたる所にピアスを空けていてジャラジャラアクセサリーを身に着けて居た。頭は染めているのか派手なピンク髪でちょっと根元が黒くなっている。
そしてキノコみたいな髪型をしている。
(さっきからチラホラ蒼都みたいな頭をしてる子が居るから流行っているのかな?)
生まれた時代が違うからか、どうも違和感を感じてしまう。
(……近いうちにファッション誌買いに行こうかな。)
そんな事を考えながら口にしたミートパスタは具がゴロゴロと大きくて食べ応えがあり、
とても美味しい。
しかも粉チーズ掛け放題なの嬉しい。
「なぁ、暦ちゃんに聞きたいんだけどさ……。」
「内容次第では答えないよ。」
食事に夢中になって居たら蒼都に話しかけられた。
「なんで始めてなのに、あんなに箒を乗りこなせんの?」
「生まれ持ったセンス。」
(昔は今みたいに年齢制限が無く、私は9歳から乗ってたんだよね。
……なんて言えるわけないでしょ!)
「へぇ!?すごっ!!」
……蒼都は見た目と違い素直な子みたいで良かったよ。
「それにしても先公達よりもスピード出てたよな……!
すげぇカッコ良かった!!」
「そりゃ命知らずだからね。」
1回死んでるし……余命も決まってるからね。
「あ!桜井さん、探しましたよ。」
「玲くんどうしたの?」
蒼都との会話が楽しくてつい話し込んで居たら玲くんがやって来た。
「次の授業は音楽で移動しないと行けないので案内しようかと……」
「ありがたいけど、もう少し食事に時間が掛かりそうだから今回は蒼都と一緒に向かうよ。」
「大丈夫です。待ちますので」
そう言いながら玲くんは私の隣に座った。
「せっかくの昼休みをここで潰しちゃって良いの?」
「伯父さんから出来るだけ近くに居るように言われてるんです。
なので気にしないで下さい……お小遣いも貰ってますしね。」
「……なるほど。」
(意外に現金な奴だな。)
そしてお腹を満たした私は蒼都と玲くんと一緒に次の授業場所へ向かった。
魔法少女が死ぬのは解釈違い(でも死にます。) 森林 木木木 @asimoto3
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