3話
不安だらけの授業が始まった。
一限目は魔法薬学で座学だった。
薬の副作用を最小限に抑える為にする手順の基本や呪文、
今では禁止となった素材が使用されている昔の薬品を回収してる場所が載ってたり、自分で行える処理方法についてなどを学んだ。
今回は座学だったが、次回からは実際に魔法薬を作成するらしい。
ちなみに真面目に受けている生徒は私と玲くんを除いて片手で収まる程度だった。
(前まで主流だった気持ちが明るくなる薬に使うこの素材って今では規制されているんだ……効果テキメンで飛ぶように売れたのに残念……)
今回の内容は私が知ってる事が大半で暇だったので教科書をパラパラ読むことにした。
教科書の説明では効果があり過ぎて依存者が続出し、今では専門資格を得ないと使用出来ない上に量の上限もあるらしい。
(前だったらこの上限の2、3倍くらいが普通だったのに、この程度の量じゃ効いてるか分からないじゃない…………あっ、でも代用できる素材がこんなにも見つかって居るから効果はあるのか……?早く飲んで試したいなぁ)
教科書を読んでみてショックだったのは、魔法薬の販売が専門資格である魔法薬学検定の3級〜1級を得た上で魔法研究支援会に加入しないと販売が出来ない上に売上の1割〜3割持ってかれる事だった……。
ルールもあって破ると罰金を課せられるし、何度も破れば魔法薬の作成と販売の停止、酷いと魔法薬学検定の剥奪もあり得るらしい……。
なんだよ。魔法薬学検定って……
(昔は貧乏学生の割の良いバイトとして人気を誇っていたのに……!!)
……ルールが無かった時代だったから、きっとここ数十年の間に沢山トラブルが起こって規制されて今に至ったんだろうけどショック過ぎるわ。
やはり半世紀も眠ると法も知識も色々と進んでるね……。
こうして時代の変化にボッコボコにされながら、
2限目の数学、3限目の国語と授業を受けていった。
そして4限目の飛行訓練のため、運動着に着替えグラウンドに移動した。
体育の内に入るみたい。
この授業は隣のクラスと一緒に受けるらしく、人数が多い。
意外にも私のクラス子達はほとんど揃って居てビックリした……。
……あれ?何だか全体的にワクワクしてる??
(ただの飛行訓練なのに……どこにワクワクする要素が有るんだろ?)
そう疑問に感じていたら見覚えの無い先生達と黒沼先生がゾロゾロと来て私達に箒を配り始めた。
どうやら箒は学校支給らしい。
持ち手側にはベルが付いており、赤いリボンで固定されている。
とてもシンプルなデザインになってて、見た目より軽いのが好印象だ。
(クセが無くて乗りやすそうだな……。)
貰った箒を観察していたら凛々しい女性教師が話し始めた。
「皆さんこんにちは!!飛行訓練担当の重門字 沙月と申します。
実習に入る前に復習として説明を軽くしますね。」
重門字先生の説明内容をまとめると、
始めての実習授業なので今回は飛ばずに箒を浮かす練習をして慣らしましょう。
との事……
まじか……
───────
後から礼易に聞いたら、
飛行は魔力差や箒の質の向上に寄りどこまでもスピードが出せるようになった為、高頻度で事故が発生する様になり危険と見なされて14歳の年からと決められたらしい。
現代は車もあるから交通ルールもかなり整備されたみたい。
(だから見慣れないマークがあったのか……)
私はもう現代に付いていけそうに無いよ。
───────
それにしても、
「無理でしょ……」
絶対に乗る回す奴居るって……!!
……あぁ、あの麻雀ヤンキーグループが見るからにソワソワ、ニヤニヤしてるわ。
なんて分かりやすい確定演出……!!
やらかす気満々だね。
「……?何が無理なんですか??」
「いや、独り言だから気にしないで。」
思わず口に出た言葉が玲くんに聞かれてた……気をつけなきゃ。
「では皆さん!間隔を充分に空けて並んで下さい!!」
私達は先生の指示に従い、スペースを作った。
「皆さん!用意は良いですね?……では練習を始めて下さい!!」
重門字先生がそう合図を出すと、
待ってました!!と全体の3分の2(ほとんどが私のクラスだけど……)くらいの子達が勢い良く飛んで行った……。
「あ~ぁ、命知らず。」
私は思わずポロリと零していた……。
……あの感じだと時速70キロ以上は出てるな。
そう大人しく箒を浮かす練習をして居たら、先生達が次々と箒に乗り追いかけて行った……。
(この様子だと恒例行事なんだろうな……。)
先生達は次々と華麗にヤンチャな子達を回収していき、
すぐに残りは片手で収まる程度となった。
(あっ!あの子は……)
その中には私のクラスに居た麻雀を嗜む派手な子が一人混じっていた。
箒の持ち手を上に向けているのでドンドン高度が上がっていて、とても危ない状況になっている。
軌道も不安定で中々、先生に捕まらずにアッチコッチと飛んでいた。
…………何だか箒に振り回されてるようで持ち手から片手が外れていた。
「!!桜井さん!??」
玲くんがそう声を上げ、始めて私は飛んでいる事に気が付いた。
「……っ!!」
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