2話
学校に着いてしまった……。
礼易が私のどんな記憶を覗いたのか聞きだせてないのに!!
「そんな不機嫌な顔しないでくれ……いずれ話す事になると思うから……ね?」
微笑を浮かべて含ませる言い方するな!
余計に気になるよ!
「まぁまぁ……紹介したい子が居るからとりあえず降りようね。」
「…………」
何だか私が子供みたいじゃない……。
車から降りて学校の門に近づくと生徒らしき人物がコッチを見ていた。
「おはようございます。伯父さん」
「おはよう。玲……この子が暦さんだよ。」
「はじめまして。立花 玲と申します。貴女の事は伯父さんからよく聞いています。」
「はじめまして……桜井 暦です。」
この子いま礼易の事を伯父さんって呼んだ?
「暦さん。私に弟が居るのは知ってるよね。」
「あ~あの赤ちゃんでしょ?……確か名前は蒼くんで13歳差だっけ?」
「その蒼の末息子だよ。」
「!?」
あの顔から出せる体液を滝のように出していたミルク臭い赤ん坊の息子……!?
改めて時の流れを実感して頭痛が痛いね。
キーンコーン……カーンコーン…………
「色々と気になるところで悪いけどチャイム鳴っちゃったからとりあえず授業受けておいで」
「…………。」
「桜井さんと僕は同じ教室との事なのでこれからよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく……玲くん私は同い年だったんだね。」
だって本来なら礼易と同じ59歳になってる筈なのにイレギュラーな出来事のせいでずっと眠ってたから老いず、今に至るわけで…………まさか礼易そっくりの甥っ子と同じ学校に通うなんて誰が予想できる???
昨日からずっと複雑な感情ばかりに直面してるなぁ……
「桜井さん、着きましたよ」
「?……教室に行くんじゃなかったの??ここって職員室だよね。」
「そうなんですけど、桜井さんは転入生ですから担任教師と向かって貰います。」
「なるほど。」
トントン……
「失礼します。……黒沼先生、桜井さんを連れてきました。」
玲くんはドアをノックし私を連れてズカズカ入って行った。
黒沼先生は青白い顔をした幸薄そうな美人だった。
「立花くん、ありがとう。時間が押してるから先に教室に向かってくれ」
「わかりました。桜井さんまたあとで会いましょう。」
玲くんはそう言い残して教室に行った。
「桜井さん、はじめまして。貴方のクラス担当の黒沼と申します。貴女は今日から2年5組の一員となります。これが現在の席順で貴女は窓際の真ん中辺りの席となります。」
黒沼先生はそう言って私に座席表を渡す。
「隣の席は玲くんなんですね。」
「あの子は面倒見が良いですからね。……では教室に向かいましょう。」
私は黒沼先生の後に着いて教室に向かった。
向かう途中に、
「この学校は校舎が大きいから迷いやすいので最初は誰かと……出来れば立花くんと行動してください。」
「生徒数が中等部だけで1000人以上いるから、とりあえず自分のクラスメイトの名前を覚えるだけで良いですから。」
と色々と説明して貰って気が付いたら教室に到着した。
ドアを開ける前に黒沼先生が、
「あ、言い忘れてたけどこの教室は問題児が多いので気をつけて下さいね。」
どこか疲れた笑みを浮かべながらと爆弾発言をした。
「おはようございます。
皆さん、席について下さい。今日から新しく来た生徒を紹介します。
桜井暦さんです。」
「……桜井暦です。今日からよろしくお願いします。」
教室に踏み入れたらそこには異世界が広がっていた。
まず最初に視界に入ったのは教室のど真ん中で麻雀を嗜んでいる子達だ。
大半の見た目がとにかく派手で柄が悪い。
校門辺りでは名門校なのかな?と感じてたのに一気にその感想は散っていった。
そして次に視界に入ったのは、私を品定めするように見ながらコソコソと話している一軍?女子の群れだ。その子達はパッと見の派手さは無いが人一倍に見た目を綺麗にしている様子で非常に関わりたくない。
あとは、堂々と朝ご飯らしきものを頬張っている子や自前の枕を机に乗せて寝ている子、
静かに読書をしている子や箒の手入れをする子などまるで統制が取れてなく動物園のような教室だった。
(これは私の隣が玲くんになるのも納得だな……。)
「この時期に転入生?」
「暦って名前なの?古臭ぁ!!!」
「見た目は……中の下って感じだね!」
次々と特に一軍女子たちが好き勝手に話し始め、入って早々に嫌気が差してきたよ。
なんだこのメスガキども……
「こら!初対面の子に失礼な事を言わない!」
黒沼先生は叱ってくれてるけどまるで効いて無いな……
明日から来なくても良いかな……魔法少女として活動しなきゃいけないし、1年後には死んでるし、私……。
そんな事を考えて席に着いたら、
「桜井さん。明日もちゃんと学校に来てね?」
と玲くんにしっかりと釘を刺された。
「……なんかこのクラスって個性的だね。」
「思春期を拗らせた子が多いだけだよ。」
そうして不安だらけの学校生活は始まった。
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