第49話

マンションの前に着き、後ろ髪を引かれながらも彼女の手を離した。




「あの、久貝さん」




彼女の方から話しかけられたが、なかなか彼女は口を開こうとしない。



少し考え込んでいる様子だ。



どうしたんだろう。



なんとなく、一歩近づいて彼女のことを抱きしめてみた。




「私、久貝さんのこと好きなのかわからなくて。



というかそもそも好きがなんなのかもわからなくて。」




「でも」


と彼女は続ける。




「久貝さんといると、落ち着きます」




そう言って俺の胸に頭を擦り付けてくる。



…び、びっくりした。振られるのかと思った。



振られるのに比べたら、俺のこと好きかわかんないなんてどうってことない。




俺はなだめるようにポンポンと彼女の背中を軽く叩きながら言った。




「いいよ




霜月さんのペースでいいよ」




…俺といると落ち着くって言ってくれたし。




「ありがとうございます」




と小さく返ってくる。



そんなこと悶々と考えてたなんて可愛いなあ…。



俺の彼女への「好き」はとどまることを知らない。

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