第44話

胸が締め付けられてるみたいに、何かを搾り取られているみたいに苦しい。



鷲掴みにされて、離れてくれない。



感情が彼女にしか動かされないような感覚だ。



彼女に俺は殺されかねないと、馬鹿みたいなことを本気で思う。



なんかもう、好きすぎて、死にそう。




「ほんと」




俺はそう言うと、マグカップをテーブルの上に置いた。




彼女が持っているマグカップも手にとってテーブルに置く。



彼女は目を丸くしてその動作を見つめていた。



俺は彼女のことを試すようにじりじりと顔を近づけた。



彼女はとにかく目を見開いて、同じようにじりじりと上体を後ろに引く。



後ろに引き続けた彼女の体が行き止まりに当たった。



俺はそれでも顔を近づけるのをやめなかった。



ゆっくり、ゆっくりと近づく。



彼女の息づかいを感じるくらい近づいたころ、




「嫌?」




といつものように首を傾げた。



俺から仕掛けたのに、これはちょっとずるすぎたかな。



彼女は顔を真っ赤にして、目を少し潤ませながらこくんと頷いた。

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