第36話

翌日から彼女のことを車で送るようになった。



少しダメもとで、寒いから家まで送らせてと言ってみると、意外にも素直に住んでるところを教えてくれた。



彼女の住んでいるマンションの前の道は狭かったので、その道だけ2人で並んで歩いた。



車もいいけど、やっぱり並んで歩くのが1番いい。



車だとあんまり隣が見れないし。




「あの、久貝さん」



ある日の帰り道、マンションの前に着いたころ彼女に話しかけられた。




「いつも送ってもらっているので、何かお礼がしたいんですけど」




予想外の言葉だった。



彼女を家に送り届けるなんて、俺にとっちゃご褒美みたいなもんなのに。



…お礼、か。




「…何でもいいの?」




「私にできることであれば何でも」




少し欲を出してみてもいいだろうか。




「じゃあ、ぎゅってしたい」



「…」



「…」

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