第34話

目的地に着いて車を降りた彼女は、唖然としながらその建物を見上げていた。



反応がいちいちかわいいな。



俺はクスッと笑って店内に入ると、彼女も急いで入ってきた。



前にお寿司が好きだと言っていたから、寿司屋に連れてきた。



回転寿司とかではなく、個室の寿司屋。



めちゃくちゃ調べて、口コミとかも見まくって厳選した店だ。



注文した寿司が届き、彼女はさっそく食べ始めた。




「ものすごく美味しいです。今まで食べたお寿司の中で1番。」




彼女は口に手を当て、目を輝かせている。




「よかった」




ほんとに、よかった。



彼女は美味しそうに寿司を食べ進める。



もぐもぐと頬張る姿は小動物みたいだ。



口ちっちゃいな。顔が小さいのかな。



ぼんやりと彼女が食べる姿を眺めていると、だんだん俺のことをチラチラ見て気まずそうにしている。




「緊張するのであんまり見ないでください…」




さっきの俺の言葉だ。語尾がどんどん小さくなっていった。



俺はフッと笑い、彼女に尋ねた。




「好きなネタなに?」




さっきから届くのがまぐろばかりだから、ほとんどわかりきってるけど。




「…まぐろです。久貝さんは?」




「じゃあ、俺もまぐろ」




彼女は不思議そうにしている。




「すみません、久貝さんお肉が好きって言ってたのに」



俺の好きなものとかどうでもいい。今は肉が全滅してもいいくらいだ。




「お寿司もお肉と同じくらい好きだから」



「そうだったんですか?」



「うん、そうなった」




そう返すと、彼女は少しの間俯いて、残りのお寿司を食べ始めた。

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