第26話

俺は再びフッと笑いをこぼし、いじわるするはそのくらいにして、彼女が答えてくれそうな質問を探した。




「霜月サンの、好きな食べ物は?」




彼女は少しだけ考えると口を開いた。



「…お、お寿司です」



よかった。答えてくれた。お寿司か。美味しいもんな。



「じゃあ、嫌いな食べ物は?」



「…バナナ」



「なんで?」



「小さい頃から味が嫌いです。生まれつきです」



なるほど。バナナこの世から全部なくなれ。



「趣味は?」



「映画見たりとか」



「好きな映画は?」



「アクション系」



「嫌いな映画は?」



「…ホラー系」



「なんで?」



「見たあと思い出すから嫌です。」



…かわいいな。



「好きな場所は?」



「お布団」



インドア派なのか。



「嫌いな場所は?」



「…心霊スポットとか」



ホラー系はとにかく無理なんだな。



「好きな季節は?」



「夏」



自分の名前が彼女の口から出ただけで体が勝手に反応してしまう。彼女は好きな季節を答えただけだ。

俺は小学生か。



「…嫌いな季節は?」



「冬」



冬が似合う彼女は、冬が嫌いだった。



俺と一緒だ。寒いの大嫌いだから。

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