第23話
「いいですよ」
と返事が返ってきた。
夢みたいだ。嬉しい。顔に出てしまっているに違いない。
連絡先を交換した彼女の名前が表示された。
霜月 十和
しもつき とわ、かな。
「くがい なつき」
自分の名前を呼ばれた。名前を呼ばれただけなのに、心臓が一際大きく跳ねる。本当に寒さなんて微塵も感じなくなった。
俺はそれに頷き、彼女の名前を返した。
「しもつき とわ」
同じく彼女は頷いて返してくれる。
名前も、冬に似合っている。かわいい。俺は今すぐ呼びたい気持ちをグッとこらえた。
パラパラと雪が降り始めた。
今って雪が降るほど寒いのか。
寒さなんて忘れてしまった俺はそんなことを思った。
「雪」
空を見上げ、そうつぶやきながら手のひらで雪を受け止める。
しばらく降る雪を見つめた。
今日の出来事は、雪が降るほど寒かったおかげで起きたことだったと思う。
ありがとう、と俺は初めて天に感謝した。
彼女に目を移すと、彼女も降る雪を見上げていた。
雪、好きなのかな。嫌いなのかな。
冬は好きかな。好きな季節、なんだろう。
知りたいことが山ほどある。
見つめる俺に気づいた彼女は、気まずそうに目を逸らす。
しばらく沈黙が流れたあと、彼女は立ち去って行ってしまった。
胸の高鳴りがまだやまない。
彼女と友達になれた。かなり無理やりだったけど。
俺はもう一度連絡先の欄に浮かぶ彼女の名前を見つめた。
「十和」
いつかそう呼べる日が来るといいな。
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