第21話
そう決心した週の水曜日、俺はいつものビルの前の柵に腰かけた。
ビュッと風が吹く。なんか今日、寒すぎる。
そっか、今日は10年に一度の寒波が来てるって朝のニュースで言ってたっけ。
いつもの時間になっても彼女は出てこない。
ビュービューと、10年に一度とやらの風が吹きつける。
残業してるのかな。
仕事、忙しいのかな。
どんな仕事してるんだろう。
趣味はなんだろう。
全部、知りたい。
ぐるぐると考えるのはもちろん彼女のことだ。
手足の指先の感覚がない。俺、どのくらい待ってるんだろう。今って何時だ。
頭が痛い。この前よりも、頭がぼーっとする。
なんとなく、人の気配を感じた。
いつのまにか閉じていた目を開くと、不思議そうにしている目をした彼女が俺の顔を覗き込んでいる。
…あれ。これって本物?それとも寒さにやられて幻覚でも見てるのかな。
寒い。凍死しそう。
彼女は俺のことを見つめている。
綺麗な二重。
黒目が大きくて吸い込まれそう。
肌、白いから冬が似合うな。
髪、柔らかそう。触ってみたい。
口ちっちゃい。
脳みそが働かない。とにかく目の前にいる彼女がかわいくて、俺のものになって欲しいのに、俺のものじゃない。
そう思うと少しだけ涙がにじんだ。
「俺と、付き合って」
頷いてくれたらいいのに。そしたら俺のものなのに。
幻覚だとしたら、頷いてくれたっていいじゃん。
お願いだから。
「と、友達からとかなら、、」
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