第19話

彼女が俺の隣に腰かけた。



心拍数が上昇する。さっきまで冷え切っていた体がじわじわと体温を上げた。



隣の彼女が口を開いた。




「あの、あなたがどうして私を知っているのか、どうして私に付き合ってと言うのかはわからないけど、私はあなたとお付き合いはできません。



ごめんなさい。」




息が、詰まりそうだ。言われている言葉は至極真っ当なはずなのに、息苦しい。



彼女は俺に目を向けることもなく、駅の方面に歩いて行った。



彼女が言った言葉はきっと、もう来ないでくれ、という意味だろう。



そりゃそうだ。突然目の前に現れて、なぜか告白されて、待ち伏せまでされているのだから。



それなのに、彼女は今日、ビルの前で待つ俺のもとにわざわざ来てくれたし、温かい飲み物まで渡してくれた。



自分から俺のところに来るのだって勇気が要っただろう。



きっと優しい人なんだろうな。



もう来るなと言われたのに、好きが募ってしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る