第18話

翌週、同様に彼女のビルの前に腰かけ、彼女のことを待った。



…あれ。いつもの時間になっても出てこない。



残業、してるのかな。もう少し待とう。



ソワソワしながら待っていると、どんどん日が暮れて夜になった。



ビル風が容赦なく体に打ちつける。



…寒いな。もうどれくらい待っているのかも正直わからない。



まだ残業してるのかな。



そう思いながらビルを見上げる。当たり前だけど、彼女が勤めている階なんて知らない。



…もう帰っちゃったのかな。今日は休みだったのかも。



でももしそうじゃないとしたらと思うと、なかなかビルの前を離れられずにいた。



寒さで頭をぼーっとさせながら地面を眺めていると、人影が目の前に立った。



顔を上げると、彼女が立っている。



あ、彼女だ。口元がマフラーに隠れてて顔が全部見えないのが悲しい。



彼女が現れた高揚でぼーっとしていた頭が叩き起こされる。



彼女がペットボトルのお茶を差し出した。



少し驚きつつ、それを素直に受け取る。



…あったかい。





「ありがとう」




「いえ」




短い返事が返ってきた。

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