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第15話

その日、いつも彼女を眺めているところを離れ、ビルの前の柵に腰かけた。



俺、なんて声かけるつもりなんだろう。



はじめまして、とかでも言うつもりなんだろうか。



自分のことなのに、なぜか他人事のように考えてしまう。



もう一人の自分が好き勝手行動してるみたいな感覚だ。



彼女がビルから出てきた。



ビル風が強く吹き、彼女は身を縮こませる。



目が合った。



やばい。俺のこと、見てる。



彼女は少し目を見張ったあと、ふいっと目を逸らして俺の前を通り過ぎようとする。



これを逃したら2度と話せないような気がした。



とりあえず、止めなくては。



声をかければいい話なのに、思わずガシッと彼女の左腕を掴んでしまった。少し力が強すぎたかもしれない。



今までで1番近い距離で、彼女と目が合う。



色素の薄い瞳が完全に俺を捉えた。



その瞬間、半年以上思いを馳せ続けた結果、こじれにこじれた彼女への思いがドバドバと溢れ出した。





「俺と、付き合って」





…俺、何言ってんだ。




「え?」




彼女は明らかに困惑した声を出した。



声、かわいい。



…じゃなくて、俺何してんだ。



頭ではそう思ってるのに、もう1人の俺は止まらない。せきを切ったように言葉がこぼれる。





「あんたこと好きだから」

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