第7話
俺はあの光景をもう一度思い返す。
肩につくくらいの焦げ茶色の緩いウェーブのかかった線の細い髪。
なめらかな白い肌。
そして大きくて色素の薄い黒目から涙を流す彼女は、目の前にいるのになぜか消えてしまいそうだった。
なんで俺は彼女のことが忘れられないんだろう。
彼女が泣いてたからなのか、
その涙を際立たせるように儚げに桜が舞って、光が照らしていたからなのか、
彼女が消えてしまいそうだったからなのか。
…いや、きっと全部だろう。あの日見た光景の全部が、忘れることを許してくれない。
だが俺がいくら忘れられないからと言って彼女ともう一度会う方法はないし、彼女の情報が増えるわけではない。
どうしようとか、そういうレベルの話ではない。どうもできない。
あの日からすでに1ヶ月が経とうとしている。
1ヶ月も一度見ただけの人のことだけを考え続けているなんて、俺病気だ。
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