第6話

と、心震えた出来事があったはいいものの、結局彼女の名前も何も知らないし、知る術もない。



知ってるのは顔だけ。



だが俺はその日以来、顔しか知らないその彼女の姿が脳裏にこびりついて離れなくなってしまった。



スーツを着ていたから、新入社員のようだった。



ちなみに顔写真付きのうちの会社の社員名簿を見てみたが、彼女らしき人はいなかった。



…俺の会社の社員だったら良かったのにな。



もしかしたらこのビルで働いているのかもしれない、と思い、今までよりビルの共用スペースに行きまくっているが今のところ無駄に終わっている。



仕事中に席を立ちすぎて先輩にどやされたくらいだ。



あの日はビルに入っているどの会社も大体入社式をやっているだろうから、どこの社員なのかはわかりようがない。

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