第11話
「おいおい。おれが勝手に手紙を出したってか? お前が牧野を好きだって言うからチャンスを与えてやったんだろうが」
去年まで柔道部に入っていた金子は、中学生とは思えないほど体格がいい。それは見た目だけでなく、この辺の中学校で金子の名前を知らない者はいない、というくらいケンカが強いという話だった。子分のようにくっついて歩いている山本と平田が慕うのも無理はないように思われた。
「とにかく私は帰ります」
金子が出てきたことで不安の増した絵美は、急いでこの場から立ち去ろうとした。
「だから待てって言ってんだろ?」
早足に去ろうとしたところで腕をつかまれ、勢い余ってその場に尻もちをついた。その姿を見て、ニヤニヤと薄笑いを浮かべながら、山本と平田が校舎の方向から歩いてくる。もし絵美に逃げられたら、彼らが捕まえる計画になっていた。
「おい。こっち来いよ」
モトは金子に呼ばれ、おずおずと絵美の方へ近づいた。絵美は両腕を金子に、両足は山本と平田に押さえつけられ、体の自由を奪われて、さらに恐怖によって声まで奪われていた。声を出そうとしても呼吸器系がうまく動かない。過呼吸になる。肺は空気を吸い込むばかりで、吐き出してくれない。助けを呼ぼうにも悲鳴すらあげられず、ただただ引きつったような音が漏れるだけだった。モトは子分二人によって開かれた脚の間に立った。極度の恐怖で歪んだ絵美の顔に一瞬ひるんだモトを、金子が低く「おい」と脅す。その脅しに突き動かされ、モトはポケットからはさみを取り出し、スカートの中に手を入れる。それを振りほどこうともがかれて再度ひるんだところに、平田が蹴りを入れる。
「なにしてんだよ?! 早くしろよ!」
震える手で下着の両脇を切る。それを確認し、山本と平田が脚をさらに開く。絵美は過呼吸のために意識がもうろうとし始めていた。抵抗する力がでない。
「よし。脱げ」
怯えた目でうつむいたまま、モトはベルトを外し、ズボンを脱いだ。
「うははは! なんだよ! やる気満々じゃねえか!」
絵美は白く霞んだ視界の隅に、カバンに提げられたキーホルダーを見た。周囲がもう少し明るければ、そこにHの文字が見えるはずだった。
言語とは到底思えない、うめき声にしか聞こえない音を絵美は絞り出した。
「やめて…。本田君…」
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