第6話

 新学期。

 桜が満開な正門を潜る。



 1年前のことを思い出す。

 オレは1年前、如月凛子という女に惚れた。

 だけどもう如月凛子の姿はない。

「匠~!」

 大声で叫ぶ夏樹のバカが、掲示板の前にいた。

「また同じクラスだぜ!」

 とVサインをしてみせる。



 ほんとにギャップが激しいヤツだ。

 苦笑いしながらオレは歩いて行く。

 掲示板の前に来ると、またもや出席番号が後ろ前なことに笑えた。




 校舎に入ると周りを見渡してしまう。

 如月凛子の姿を探そうとしている自分に驚く。





 もう別れたってのに。

 もう会えないってのに。




「どうした?」

 夏樹が聞いてくる。

 そんな夏樹に微かに笑うだけだった。



 新学期が始まって数週間。

 オレは同じクラスの女と話をしていた。

 名前は新島まゆ。

 席が隣同士だったからだ。




「長澤くん。あたしね、長澤くんのこと、1年の時から好きだったんだよ」



 どういう話の流れでそう言われたのか覚えていない。

 だけど確実に時間は流れていた。

 如月凛子はもういない。

 だったらオレは新しいを見つけてもいいんじゃないか。



 それでもこの校舎で君の影を探してしまうだろうけど、オレは新しいをしてみようと思う。




「新島。オレ、まだ凛子を忘れられてねぇんだ。それでもいいなら付き合おう」








【完】

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君の隣 星河琉嘩 @ruka0421

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