君の影

第1話

「匠!」

 後ろから声がかかる。

 オレは屋上で卒業式のを聞いていた。

 そこに悪友である、夏樹が来た。



「んだよ」

 オレは目だけを夏樹に向ける。

 夏樹はニカッと笑い、オレに近付く。フェンスに凭れてかかっていたオレの隣に来て、煙草を取り出す。

 コイツは普段はマジメなフリして、実はワルだったりする。



「夏樹」

 オレは横目で夏樹を見ると、無言で威圧した。

「いいじゃね~かよ、どうせここには誰も来ない」

 屋上は立ち入り禁止だ。なのにオレ達はこうして出入りしている。



「あ。だ」

 誰の選曲なのか、うちの学校の卒業式ではこれが歌われる。

「だっせぇ」

 ポツリと呟くとオレは体育館にいる、彼女を思い浮かべた。

 彼女、如月凛子はとても気高く綺麗だ。誰が見ても彼女はひとりで生きていけるタイプだ。



 だけど、オレだけは知ってる。

 本当の彼女の姿を。



 オレだけが知ってる──……。




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