ハロー

朝の目覚め

翌朝。



枕元に置いた携帯が朝のアラームを鳴らした。


大音量に設定してるためうるさくてたまらない。


「あら、おはよ」


下で会うなり驚いたように挨拶をしてくれたお母さん。


その反応わかるけど……!!


いつもなら一回目のアラームじゃ起きる気配もないなく、八時頃お母さんにでたたき起こされる。


「ご飯ある?」

「ええ………それより熱でもあるの?」

「ないよ。目が覚めただけ」


それは本当。


突き刺さるような視線に寝てなんていられなかった。


部屋を見渡しても誰もいなかったし、気のせいかもしれないけど。


七時に起きるとこんな温かいご飯が食べられるんだ。ギリギリに起きると朝ご飯を食べ損ねることもある。


「ねぇお母さん。私が死んだら悲しい?」


手が止まった。


お箸を置く音がして名前を呼ばれた。


「悩みでもあるの?」

「ないよ」


あるよ。


「ほら、私ってさ親孝行とか、そういうの全然しないじゃん?だから、さ……」


私はどんな答えを期待しているのだろう。


否定?肯定?


それとも考えて悩む?


お母さんは小さく息をついた。


「あんたに何があったか母さんはわかんないけど、あんたが死んだら悲しいなんてもんじゃ…ないわ…」


目に涙を浮かべるお母さんの心をきっと私は踏みにじったんだ。


お母さんは強い人じゃない。

そんなこと何年も前から知ってたのに。


「ごめん。もうこんなこと言わない」


用意してくれていたハンカチを差し出すと


「当たり前よ」


いつものように笑ってくれた。


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