ゴーストタウン
「行ってきます」
ドアを開けるとそこは、昨夜と同じ見知らぬ土地。
うろたえるのも怯えるのも後にして、適当な建物に身を隠す。
昨日の今日で、いきなり飛ばされたらとにかく隠れればいいと学習した。
「イヤァーーーー!!」
外から女性らしき人の悲鳴。
窓からそっと顔を出してみると、あの子に追いかけられる裸足の女性。
──助けたいけど私は無力だから………。
それ、を理由に耳を塞いで、気付かないふりをした。
それにしてもあの子、怒ってたな。
ううん。そんなことより逃げ抜くことだけを考えないと。
もっと安全なとこに移動しよう。
部屋全体は見通しはいいけど、狭いし逃げ場がない。
窓から飛び降りていい隠れ場所がないか街を徘徊する。
ここ、昨日来たとこと違う。
昼間だから雰囲気が違うだけかと思ったけど、ここはまるでゴーストタウン。
昨日の場所とは似ても似つかない。
「ひっ……」
私の隠れていた建物からそう遠くないとこに、さっきの女性の体が転がっていた。
首は見せしめのように蓋のされたポリバケツの上に置かれている。
その周りには白と黒の糸が首を守るように張り巡らされていた。
ここにいたらあの子が戻ってくるかもしれない。
建物の陰に身を隠しながら適当に逃げてると、随分古びたステージ広場についた。
ゴーストタウンなんだし、古びてて当たり前か。
こんな見晴らしのいい場所じゃすぐ見つかっちゃう。ステージ裏にでも隠れ……。
振り返った目の前に、瞳孔を開ききって奇怪な目で私を見つめる等身大の人形。
思わず悲鳴を上げそうになった。
「びっくりした〜」
さっきまでなかったのに……。
すぐに立ち去ろうとすると人形の首が高速で回転しはじめた。
そして
「ハローハローハローハローハローハローハローハローハローハローハロー」
街全体に響くような大きな声で「ハロー」と叫ぶ。
「ちょ、やめてよ!あの子が来ちゃうでしょ!」
「ハローハローハローハローハローハローハロー」
私の言葉なんて届いてない。
一歩下がると人形も一歩近づいてきた。
追ってくるつもりだ。
どうしよう。
なんとか黙らせなきゃ。
でもどうやって。壊すにしても頑丈そうだし。
「ハロハローハローハローハローハローハローハロー」
「あぁもう!ハロー!これで満足!?お願いだから静かにしてて」
すると人形は急に静かになった。
ハローって返して欲しかっただけか。
ホッとしたのも束の間。
人形の目が光り、宙にスクリーンが写し出された。
ゲームによくある説明みたい。
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