見つけた
ー放課後ー
「こんな暗かったっけ?」
時刻はまだ五時過ぎなのに、心なしかいつもより町並みが薄暗い。
誰も気にしてないみたいだし気のせいだよね。
いつもと同じ帰り道なのに冷たい空気がまとわりつく。
「待っててもらえばよかった」
腕をさすりながらボヤいた。
先生の用事なら遅くても十分ぐらいで終わると思ったから引き受けたけど、まさかあんなにあったとは……。
コウは手伝ってくれると言ってくれたけど
過ぎてしまったことを悔やんでも意味はなく次からはそれとなく断ろう。
「って、あれ!?ここどこ!?」
手書きの看板が目立つ本屋の角を曲がると小学校があるはずなのに、目の前に広がる景色は、夜の街だった。
露出度の高いバニーガールや、安い!!と強調されたチラシを配る人。
これは……夢?
だって、ありえるわけないのに。
私たちの町S市にこんな店は一軒だって存在しない。
「そ、そうだ!電話!」
迷うことなくコウにかけた。
プルルルルル
──お願い。早く出て!!
私の、そんな願いは通じなかった。
虚しいだけのコール音だけが聴こえてくるだけ。
私はヘナヘナと座り込んだ。
電話はかけられるのに繋がらない。
メールは送信できない。
ネットを開こうとすると『警告』の文字が邪魔をする。
ここがどこだかわからないまま煌びやかな世界をフラフラしてると、最近じゃあまり目にしなくなった物がひっそり立っていた。
公衆電話。
小銭は……使えるのは八枚。
これだけあればなんとかなる!……はず。
十円玉全部入れて祈ったあと、コウの番号を押した。
プルルルルル。ガチャ。
「っ!!コウ!?助けて!私いま……」
なんだろ……この感じ。
電話は通じてるはずなのにコウは一言も喋らない。
もしかして公衆電話だから?
「コウ!私だよ!ヒロミだよ!!」
声を聞きたいのに……。
安心させて。ここが現実だって。
「………」
見慣れない景色。
喋らないコウ。
この二つに、かつてない恐怖を覚えた。
「助けて」
誰に向けられたかもわからないその言葉は静寂に飲み込まれていく。
諦めて切ろうとしたとき、微かに、なにかが聞こえた。
私はもう一度受話器を耳にあてた。
「ヒロミ……」
コウの声を聞くと気持ちも落ち着いて、正確に自分がおかれている状況が説明できた。
一昔前ならこんな怪現象よくあったみたい。
でも、化学の発展しつつある現代では考えられない。
見渡す限り携帯を使っている人はいるのに私だけが使えない。
「それでね」
「ーーーた」
「ごめん。よく聞こえなかった」
「見ぃつけた♪」
っ!!!!!!?
声だけでコウ………相手が笑っているのがわかる。
「見つけた見つけた見つけた」
声の主は嬉しそうに、楽しそうに「見つけた」と叫ぶ。
虫が這うように背筋がゾクっとした。
なくなりかけていた恐怖が再び私を襲う。
考える暇なんてない。とにかくこの場を離れないと……。
目に見えない恐怖を感じながら人通りの多い“夜の街”に逃げた。
うるさいくらい賑わう声や音に、安堵した。
ここにいるのは私だけじゃない。
いまするべきなのは、ここがどこなのか知ること。
なるべく優しそうな人に聞きたい。それでもって女性。
といってもこの辺を歩く女性は水商売系の派手な格好をしてる。
うん。ダメだ。
私には声をかけることすらできない。
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