【必要不可欠な存在】

大人達を前に難しい言葉で挨拶をしているルアード。

その表情は子供のものではなかった。


学校や公園で見る顔ではない。

笑顔すら浮かべず、淡々と話している。


これは本当にルアードなのか……?



信じられない光景に戸惑うニック。

そこへ駆けてくる人影が二つ。



「何で早く言わないのよ!迷って変な物見たらどうするの!?」



「変な物ってそんな」



「ナーガ族が来てるでしょ!?ルアードが挨拶する時間も近いし、もしそんな物を見たら──」



その部屋の前に子供を見つけ、表情を見て更に慌てるシルビア。



「やだっ、遅かった!あれ絶対見ちゃった顔よね!?」



「はは、手遅れでしたね。」



笑うシャスタにため息をつく。



「いいわよもう。何とかごまかしてみましょ。」



「そうですね。それ以前に、何を見たか理解していないかも知れませんよ?」



相手は10歳の子供だ。

ナーガやナーガラージャを理解できるはずはない。

そう思いながらニックに声をかける。



「ニック君?君達の部屋に案内しますよ?」



だが彼は視線を外さない。

じっとルアードを見つめていた。



「ルアード……王様なんだ……。」



部屋の中を見て聞いて、しっかり理解していたニックである。



「あはは、記憶消しちゃおうか。」



神器を取り出し笑うシルビア。

首を振ったシャスタがニックと向き合う。



「ニック君はルアードの友達ですよね?」



頷いた彼がシャスタの目を見る。



「ただの友達じゃありません。ルアードは親友です。」



言い切った彼の目は真剣そのもの。

幼いながらも自分の意志をしっかり持っているようだ。



「親友ですか……。それならここで見た事を内緒にできますか?」



「ルアードが困るなら誰にも言いません。でも、それなら本当の事を知りたいです。」



シャスタとシルビアが顔を見合わせる。

ルアードほどではないが、10歳らしからぬ物言いだった。



「シャスタ、この子何かあるのかしら。ルアードの人生に関わる重要な人物とか。」



「分かりませんが……そうなのかも知れませんね。私とマイケルのように、無くてはならない相棒のような存在……。」



遠い昔の記憶に思いを馳せる。


マイケルがいて自分がいる。

それが当然だった当時のFLAG。

どちらか一方が欠けては成し得なかった任務の数々。


自分にとって必要不可欠な存在だったマイケル・ナイト……。


ルアードにとってのマイケルが、このニックなのかも知れない。

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