【カミングアウト】

「すべてを知ってもルアードと親友でいられるかしら。」



それはシャスタに言った言葉。

だが答えたのはニックだった。



「何があっても親友です。今までもこれからも……ずっと親友です。」



その目には決意が現れていた。

やはり二人の間には何かがあるのだろう。



「分かりました。ニック君、不思議の世界へようこそ。」



ニックを連れて室内に入る。

セフィーナとルアードが目を見開いていた。



「パパ!?何でニックをこんな所に!?」



「迷子が迷い込んだんですよ。ルアード、彼にすべてを話してあげなさい。」



「すべてって……何を……?」



意図が掴めず、困惑するルアード。

ニックがいつもと変わらない笑顔を見せる。



「お前、王様なんだろ?頭も良さそうだし。オレに隠してたなんて酷い奴だ。」



「ニック……?」



「オレ達の間に隠し事は無しだろ?全部話しちゃえよ。」



戸惑い、シャスタの顔を見る。

頷かれ、覚悟を決めてニックと向き合った。



「僕はね、人間じゃないんだ。」



「へぇ~……って、ええっ!?」



予想外のカミングアウトに耳を疑うニック。

その反応に、ははっと苦笑するナーガの王。



「ちゃんと説明するよ。けど僕達の関係が変わるのは……」



「変わらないさ。お前は同級生で親友だ。王様でも敬ったりしないからな。」



「はは、人間じゃなくても変わらない?」



「おう、変わらない。って、ほんとに人間じゃないのか?」



頷いたルアードがナーガの話をする。

下半身が蛇の、不死を司る神──。


その一族の王なのだと説明した。



「ふ~ん……。神で王様なのか……。」



「うん。本当の姿……見たい……?」



ニックはナーガラージャの自分を理解してくれた。

だが、その姿を見ても受け入れてくれるだろうか……。



「下半身が蛇なんだよな?」



「うん。やっぱりやめとく?」



「いや、見る。すべてを知るって決めたんだ。」



その決意に頷いて、自分も覚悟を決めて化身を解いた。



「か……格好いいなお前……」



「そ、そう?怖くない?」



「お前なんか怖くねぇよ。」



へへっと笑うニックにほっとして、ルアードが安堵の笑顔を見せた。


その瞬間だった。


声にならない声。

悲鳴に近い黄色い声が響き渡る。


ナーガ族の後方に居たナーギニーが大興奮していた。

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