【まさかの敗北】

「え……」



サラが笑っている。

勝ち名乗りを上げて笑っている。


なぜだ……?

僕が……負けた……?



「なあに、その顔。負けたのが信じられない?」



頷くしかなかった。

このゲームは頭を使うゲームで……高知能の自分が負けるなどあり得ない事だった。



「あのね、負け知らずだからって油断してたでしょ?私はそこをついただけよ。」



「油断……」



ああそうか、自惚れていたのか。

絶対勝てると思い込み、それが油断となって現れたわけか。


自惚れは命取り──そう教わっていたのにな。

戦闘以外も気が抜けないという事か……。



「ありがとう、勉強になったよ。」



ニコッと笑って礼を言うと、ため息をつかれた。



「余裕ね。罰ゲームのこと忘れてるでしょ。」



「あ、そうだった!」



負けたらサラの言うことを聞かなければならない。

何を言われるのか固唾を飲む。



「じゃあ──」



「ルアード、ちょっといい?」



サラの言葉を遮ったのはセフィーナだった。



「何、お母さん。」



「ちょっと向こうで挨拶して欲しいんだけど……。」



向こうと言われ、すぐに察するルアード。

ため息をつき、了承した。



「ごめん、みんな。ちょっと挨拶してくるね。」



「罰ゲームはどうするのよ。」



「後で聞くから待ってて。」



今日のパーティーの主役だから、挨拶まわりをするのは仕方のない事。

パタパタ駆けて行くルアードを、残念そうに見送る友人達だった。


一方、そこへ向かうルアードの気は重かった。



「お母さん、まだ興奮状態?」



「んー、少しは落ち着いたみたいだけど、みんなそわそわしてるわね。」



「そっか……。けどいいや。今日はただの顔合わせみたいなものだしね。面倒な事になる前に退散するよ。」



今はまだ、ナーガ族といるより友達といる方が楽しい。

早く戻ってパーティーを楽しみたいと彼は言う。



「そういうところは普通の子供よね。高知能って事、忘れちゃうわ。」



ふふっと笑う母親に、へへっと笑う息子。



「いくら知能が高くても、人生経験はたったの10年だからね。僕はまだまだお子ちゃまなんだよ。」



「そうね、あなたはまだ10歳。遊びたい盛りの子供よね。」



「うん。だから早く終わらせるんだ。」



笑ってその部屋へと向かう。

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