【三神一体】ヴィシュヌ派

宇宙のすべては闇に包まれていた。

混沌だけが支配する闇──。



そこに1000の頭を持つアナンタ龍が一匹。


その上で、ひたすら眠り続ける男──ヴィシュヌ。



どれだけの時間が過ぎただろう……。


眠るヴィシュヌのヘソから、一本の清らかな蓮の茎が伸び始める。


やがて花が咲き、そこからブラフマーは誕生した。

そして、額からはシヴァが生まれた。


こうして、偉大な大宇宙の創造は始まった。



「どうして私が貴方のヘソから生まれるんですか……。」



「シヴァの右腰よりはマシでしょう?」



「ま、まあ、確かに……。」



「んで?何で俺がてめぇのデコなんだよ。」



「良いじゃないですか。シヴァ派よりは綺麗な誕生説でしょ?」



こくこく頷くブラフマー。

シヴァは面白くなさそうだ。



「けっ、俺派の方が派手で格好いいのによ。」



「まあまあ、崇拝する神を持ち上げるのは当然の事ですよ。」



「はいはい、蓮の花から生まれて良かったな。んで?てめぇ派の誕生説はどんな話なんだよ。」



問われた途端に項垂れるブラフマー。



「き……聞かないで下さい……。」



「って、何だよ。そんなに恥ずかしい話なのか?」



ちょっとワクワクしているシヴァを、かぶりを振りながらヴィシュヌが宥める。



「シヴァ、それは聞いちゃいけません。」



「あ?何でだよ。」



チラッとブラフマーを見やり、こっそり教える。



「ブラフマー派は……無いんですよ。」



「無い……?無いって何でだ?」



「ズバリ、不人気だからです。」



「ぶはっ、何だそりゃ!」



聞いた途端、シヴァがゲラゲラ笑い出す。



「ど、どうせ不人気ですよ!ああ……昔は良かった……。」



今ではすっかり人気の無くなってしまったブラフマー。

可哀想だが仕方がない。


という訳で、ブラフマー派の誕生説は無いのでした。



※私の持つ資料に限っての話ですよ~

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