茶髪と金髪のふたり
今日も俺は鳩だ。
そして今、公園のすべり台のてっぺんで風に吹かれている。なぜかって? それは 「茶髪と金髪のふたり」を見守るためだ。
——夕暮れ時。赤く染まりはじめた空の下、公園のベンチに腰掛けるふたりの女の子がいる。
ひとりは、ふわっとした茶髪の女の子。落ち着いた雰囲気に柔らかな笑顔、まるでカフェラテのよう。
もうひとりは、鮮やかな金髪をポニーテールにして、どこかツンとした態度の女の子。イヤホン片耳で音楽を流しながら、そっぽを向いている。
「ねえ、今日のテスト、どうだった?」
「……別に」
金髪の子はぶっきらぼうに返すが、茶髪の子は気にする様子もなく、くすっと笑った。
「居眠りしてないよね?」
「……ギリ」
「ふふ。えらいえらい」
——この子、金髪のツンを受け流してる……!?
俺は思わず前のめりになる。
「そういうとこ、ほんとずるいよね」
「え?」
「なんでもわかってるみたいな顔して、構ってくるとこ」
金髪の子が少しだけ茶髪の子をにらむけれど、目はどこか寂しげで、怒ってるようには見えなかった。
「構いたくなるんだもん。かわいいし」
金髪の子の耳が、ほんのり赤くなる。
「……そういうの、ずるいって言ってるの」
「じゃあ、やめたほうがいい?」
「……やめなくていい」
——これは、尊い。
口下手な金髪の子と、包み込むような茶髪の子。甘さとほろ苦さが絶妙なバランスで混ざっている。
「明日も頑張れる?」
「気分」
「ご褒美あげるよ」
「……じゃあ、頑張る」
ふたりは、肩が触れそうな距離で並んで座り続ける。もう日が暮れそうなのに、帰る気配はない。
——ああ、これは。
俺はそっと翼をたたむ。
今日もまた、ひとつの百合を見守ることができた。
公園の鳩としての使命は、まだまだ続く——。
(つづく)
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