第6話

きらびやかに輝くシャンデリア。

眼の前で手と手をつなぎ、優雅に踊る人々。

窓の外は月光が鈍く輝く。

窓の前で私は小さな机に身体を預け、机に突っ伏す。

退屈だった。

もしかしたら、殺されるかもしれないというせいで、他の女の子とは喋らせてもらえない。

もしかしたら、殺されるかもしれないというせいで、ご飯も自由に食べさせてもらえない。

せっかくドレスを着たのに、せっかく目の前にあの、お母さんとお父さんと一緒に見た映画と同じ景色が広がっているというのに。


「お嬢様。」

そして、近くで聞き覚えのある声が、私を呼ぶ。

「そんなに拗ねているんですか?お嬢様も、憧れというのはあるのですね」

「………」

「お嬢様も、年頃なのですね。」

「そういう貴方は私と同じ16歳でしょ?この頃の男子は、女の子と喋りたいとか、そういうものじゃないの?私以外にも沢山女の子がいるじゃない。貴方は別に踊っていても問題ないのよね?」

「お嬢様を守るのが私の役割なので。」

「じゃあ、命令よ。女の子と踊ってきて頂戴。あなたが1番可愛いと思う女の子と」

私は一体…何を言っているのだろう…

私への心配を踏みにじって私は酷い態度をして…

でも、隆一も年頃なのよね…

私みたいに制限されるようにはなってほしくない…

やっぱり…私みたいなクソ女の事なんて忘れて、他の綺麗で可愛い女の子と踊って…それで付き合ったりして、結婚して…って…何考えてんのよ…

「わかりました。じゃあ、この会場の中で一番可愛い女の子とダンスをしてきます。」

隆一はそう言うと、その場を立ち去った。

それでいいのよ…

私は強くドレスの袖のフリフリを握った。

唇を噛みしめる。

窓に映る私には涙が流れていた。

自分の言ったことでしょ!!!!!!!

自分で決めたことでしょ!!!!!!!

受け止めなさいよ!!!!!!!!!

心の中で自分を罵る。

その度に涙が溢れ出る。

「あ、居た居た!!」

そして、唐突に隆一の声がした。

私は気まずくて、その少し遠くで聞こえる隆一の声の方向にあえて向かなかった。

「実は私のご主人様に、この中で1番可愛い子と踊りなさいと命令されていて、一緒に踊っていただけないでしょうか?」

隆一の声が聞こえた。

私は、机に突っ伏したまま、手首を強く握った。

「お願いします。アズリア様」

「え…」


私は起き上がると、そこには、机の前に膝をついて笑顔を浮かべる隆一が居た。

隆一は私に手を伸ばしている。

「やっぱり、このパーティーの中で1番可愛い子はアズリア様しかいませんでした。」

「でも、私はダンスはダメって!!!!」

「私が守りますよ。さあ、行きましょうか。」

隆一は、座ったままの私をお姫様抱っこで持ち上げる。

「ひゃ!?」

「失礼しますね」

すぐ真上に隆一の顔がある。

私はドキドキしていて、必死に目元の涙を拭き取った。

「それでは、踊りましょうか。」

そして、隆一は私に言った。

私の小さな手を握って。

音楽が奏でられる中で、私と隆一は踊り始める。

くるりくるりと踊り舞い、離れたり近づいたりのすてっぷを繰り返す。

そして、遠くで、何かが光った気がした。

と、次の瞬間、隆一が私を引っ張り、位置を交代させると、隆一は腕を上から下に振った。

パアン!!と金属が鳴る音がすると、地面に弾丸の後ができる。

「だ、大丈夫なの!?」

「腕に金属を敷いているので、腕に当たった弾丸が床に弾かれただけです。銃弾を撃たれても必ず私が守りますから、踊りましょうか。」

「え、ええ…そうね…」

私は、強く隆一の手を握ると、今度は別方向から飛んでくる弾丸を、隆一は腕を振る。

すると、今度は床に弾丸が当たることはなく、何処かへと弾き飛ばす。

そして、パアン!!!と、先程最初に光った方向から音が聞こえた。

「最初に撃たれてところに縦断を跳ね返しました。」

続いて、真上から爆発音が聞こえると今度はその弾丸を弾いて、2回目弾丸を放たれた所に命中。

くるりくるりと、回ると、今度は、私と隆一の間を弾丸が過ぎる。

続いて、ナイフが投げられると、今度は、隆一はナイフをキャッチし、そして、そのナイフを真上に投げる。

「ナイフをなげるなんて物騒ですね。」

個人的には銃を撃っている方が物騒だけど…

そして、今度は、最後に締める打楽器に混じって大きな銃声がなる。

隆一は、タキシードの中に、手を突っ込むと、唐突にタキシードに穴が開くと、銃弾が少しズレた位置に撃たれた。

そして、音楽は止む。

私達は、一度、足を止めると、そこらじゅうから拍手が沸き上がった。

たぶん、私達ではなく、音楽の方に。

私達は、その拍手に紛れて中央の踊り場から離れる。

「さっきのダンス、すごかったですわ!!!」

すると、唐突に私に話しかけられる。

「え?ああ、わ、私?」

「はい!!!とても優雅で、綺麗なダンスでしたわ!!!とても美しかったですわよ!!!ぜひお友達になってほしいですわ!!!!」

「え…?あ…いいわよ?」

「ありがとうですわ!!!それじゃ、こっち来てほしいですわ!!!!!」

隆一!!!と、私は隆一の方を見ると、隆一は柔らかな笑顔で泣いていた。

隆一は、お嬢様にも友達が…と嘆きながら涙を浮かべていると、いつの間にか名前も知らない金髪の子に手を引っ張られて、そのまま連れて行かれた。

「え?あ、え!?えええええええ!?!?」

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