第四話 コンスタンティノープルの陥落

コンスタンティノープルの城壁にヒビが入った日から二カ月近く、金角湾の制海権を手に入れてから一カ月、メフメト二世は総攻撃の準備に追われていた。オスマン帝国軍は昼夜問わず大砲をぶっ放し、イェニチェリが城壁下で盾を構える。


EPAゲームだと部隊ユニット置いてしばらく放置してれば落ちるなのに、現実は寝る時間ねえよ。……なんでこの時代の皇帝になってまでブラック生活してんだろ」


と内心グチりつつ、馬上で指揮を続けた。

目の前には崩れかけた二重の城壁。だがいまだに十万ものオスマン軍の猛攻を防ぎ続けている。その威容に、いまだに圧倒されていた。




1453年5月29日、夜明け前。俺は馬から降りて、最後の作戦会議を開いていた。


「今日こそ大砲で城壁ぶち抜いて、イェニチェリで突撃。シンプルだけどこれしかない」


「陛下、今日こそ落としてご覧に入れますぞ!」


とザガノスの士気も高い。


「海軍も頼んだぞ」


「はっ、陛下。今日こそコンスタンティノープルを陥落させてやりましょう」


バルタオールの方も準備は万端のようだ。諸将の士気も高い。これならいけるはず。

チャンドゥルル・ハリル・パシャが渋い顔で心配しているが、まぁこいつはいつものことだ、放っておこう。


夜が白み始め、目の前には壮大なテオドシウス城壁が姿を現し始める。

俺は剣を抜くと、振りかざし号令を下した。


「よし、全軍総攻撃だ!コンスタンティノープルを俺の手で落とす!」


――ドカーン!


ウルバン砲が轟き、城壁に巨大な穴が開いた。その穿たれた巨大な穴に向かって、ウルバン砲以外の70門あまりの大砲が続いて火を噴く。

ザガノスの「全軍突撃!」の声とともにイェニチェリが「アッラーアクバル!」と叫びながら突撃していく。


十万近いオスマン帝国軍がウルバン砲が空けた大穴や、がれきと化した城壁を踏み越えて突撃していく。金角湾からも海軍が絶え間なく攻撃を続けている。


ビザンツ軍も必死で抵抗しており、予断は許さない。

しかし、今日は我が軍の勢いが勝った。ビザンツの必死の抵抗も虚しく、数と勢いの差でオスマン帝国軍が相手を押し込んでいく。


小門の一つが空いていたという幸運もあったようだが、それがなくても流れは変わらなかっただろう。オスマン帝国軍十万という濁流は、ウルバン砲で空いた穴からコンスタンティノープルに流れ込み、ビザンツ軍一万余りを飲み込んですり潰した。

我が軍の勝利だ!


なお、ビザンツ皇帝だが、最後は皇帝自ら前線で戦っていたようで、城門近くで戦死体が見つかったらしい。見事な最期だったと言えるだろう。


「陛下、おめでとうございます。西欧諸国も最後まで援軍を寄越さないとは。まさか落ちるとは思ってなかったのでしょうな」


チャンドゥルルが手を差し出してきたので、握り返す。まぁ敵に援軍がなくて助かったのは事実だな。


その後、戻ってきたザガノスや諸将の功を称え、労をねぎらった。ザガノスは、「スルタン様、これで先帝や父にいい報告ができます」と泣いて喜んでいた。まぁそうか。メフメト二世にしてみても、父祖伝来の悲願を達成したことになる。

オスマン帝国はこのコンスタンティノープルを首都として、ここから飛躍をするのだ。




盛大な祝宴は後日ということで、簡単な祝宴を終えた俺は夕暮れのテオドシウス城壁の上に登り、荒れ果てた街を見下ろしていた。城壁は崩れ、煙が立ち込め、イェニチェリの勝利の雄叫びも遠くに聞こえる。今日は蔵にある酒を全部出せと言ってある。兵たちのバカ騒ぎは一晩中、止まないだろう。

ふと見上げると頭上には星が瞬き始めている。


――カチリ


脳内で何かが噛み合って動き始めた――まるで止まっていた歯車が動き出すような音が聞こえた。

眼下には征服された都と勝利に沸く兵たち。


この瞬間、俺は理解した。


動き始めた歯車はもう俺の意思では止められない。

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転生皇帝、オスマン帝国で世界覇者への第一歩を踏み出す 崖淵 @puti

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