第4話「雪の下の秘密」
雪が止んだ朝、「廃墟王国」と名付けた古い処理場の窓から外を見渡した。視界一面の白。東京では見たことのない景色だ。
「まるで別の惑星だな」
私、ラスクは窓辺を離れ、古びた事務所の中を歩き回った。昨夜はミウとチロとここで一夜を過ごした。三匹それぞれのこれまでの経験から生まれた即席の共同体。私たちの小さな「王国」の始まりだ。
「おはよう」
振り返ると、ミウが事務所の奥から現れた。顔を洗ったのか、首元の毛が少し濡れている。緊張していた昨日と違い、今日は少しリラックスした表情だ。
「よく眠れたか?」私は尋ねた。
「ええ、久しぶりに安心して眠れたわ」ミウは窓の外を見た。「雪、また降り始めるわね。今日は外に出ない方がいいかも」
彼女の言葉通り、空は灰色に曇り、新たな雪雲が迫っていた。北海道の冬は厳しい。チロも昨日そう警告していた。
「チロはどこだ?」
「早朝から外を探索してるわ。『王国の範囲を確認する』って」
私たちはこの廃棄物処理場の全容をまだ把握していない。昨夜は事務所棟でしか過ごしていない。この「王国」がどれほどの広さで、何が眠っているのか。それを知ることが、生き抜くための第一歩だろう。
「おう、起きたか」
入り口からチロが戻ってきた。全身が雪まみれだ。
「随分と探索したようだな」
「ああ、思ったより広いぞ、ここは」チロは体を振って雪を落とした。「事務所棟、処理施設、倉庫、それに広い敷地。すべてが雪で半分埋まっているがな」
「何か面白いものは見つかった?」
「ああ」チロはどこか興奮した様子で言った。「お前ら、来い。見せたいものがある」
---
チロに導かれ、私たちは事務所棟から出て、雪の中を進んだ。マイナス15度はあろうかという冷気が、毛皮の下まで染み込んでくる。
「こっちだ」
チロは大きな建物の影に連れて行った。ここは処理施設の本体だろうか。雪に埋もれて入口が見えない。
「ここを掘れ」
私たちは言われるまま、前足で雪を掻き分けた。しばらくすると、金属製のドアが現れた。サビついているが、わずかに開いている。
「中に入れるぞ」
チロはドアの隙間に体を押し込み、中に消えた。ミウと私も続く。
中は薄暗く、冷たい空気が淀んでいた。しかし、外よりはずっと暖かい。目が慣れてくると、大きな機械や配管、コンベアベルトらしきものが見えてきた。
「これがどういう場所だったのか、もっと詳しく知りたくならないか?」チロが前に立って言った。
「確かに」私は頷いた。「この『王国』の正体を知るのは大事だろう」
「実はな、この奥に面白いものを見つけたんだ」
チロは複雑に入り組んだ機械の間を縫って進んでいく。私たちも用心深く後に続いた。暗闇の中、目や耳、鼻を研ぎ澄まし、危険がないか探りながら。
やがて、私たちは小さな部屋に到着した。壁には図面や写真が貼られている。床には散乱した書類。そして中央には大きな机があった。
「ここは設計室か何かかな」
私は机の上に飛び乗り、書類を調べ始めた。頭の中で、父から教わった人間の文字の読み方を思い出す。
「札幌市産業廃棄物処理施設第三工場…」
私は最上部に記載された文字を声に出した。続いて日付が書いてある。「1985年着工…1987年稼働開始…2003年閉鎖」
「20年前に閉鎖されたのか」ミウが壁の写真を見上げながら言った。「でも、なぜ?」
チロが鼻を鳴らした。「おそらく、ここに埋められたものが問題になったんだろう」
「埋められた?」私は首を傾げた。
「北海道の開発の歴史はな、自然を切り開いて進む一方で、捨てるものの処理に困った歴史でもあるんだ」チロは壁に貼られた新聞記事を指さした。「これを見ろ」
私は記事を読み上げた。「有害廃棄物の不法投棄疑惑、第三工場の実態調査へ…2002年8月」
「ここは『闇』を抱えているんだよ」チロは低い声で言った。「人間どもが捨てたくても捨てられないものを、こっそり埋めた場所だ」
「それで閉鎖されたのか」
「ああ。調査の結果、地下水脈への影響が懸念されて、操業停止になったらしい」
「ということは…私たちがいる場所は危険かもしれないということ?」ミウが心配そうに尋ねた。
「そこまでは言えないさ」チロは首を振った。「20年も経ってる。大きな問題があれば、とっくに対処されているはずだ」
私はさらに書類をめくり続けた。そこには施設の設計図や操業記録、閉鎖に関する資料が散乱していた。「この場所の歴史を知ることで、より安全に暮らせるかもしれない」
「おっと、これは面白いな」
私はある図面に目を留めた。施設の地下構造を示す図面だ。
「地下にもかなりの空間があるようだ。地下水処理施設、貯留槽…そして、こんなものまで」
図面の隅には、「緊急避難経路」と記された通路が描かれていた。それは地下から施設の外へと続いているようだ。
「これは重要な発見だぞ」チロが興奮した様子で言った。「緊急時の脱出路になる」
「でも、入口はどこ?」ミウが尋ねた。
私たちは設計図を詳しく調べ、地下への入口を探した。図面によれば、処理施設の北側に階段があるはずだ。
「行ってみよう」
私たちは設計室を後にし、図面通りに北側へ向かった。途中、倒れた棚や錆びついた機械を乗り越え、複雑な配管の間をくぐり抜ける。この施設は人間用に作られているため、小さな私たちにとっては、迷路のように感じられた。
ようやく北側に到達すると、図面通りの場所に重い鉄製のドアがあった。しかし、それは堅く閉ざされている。
「開かないか」チロが残念そうに言った。
「待て」私は周囲を調べ始めた。「換気口か何かがあるはずだ。私たちの体なら通れる」
しばらく探した後、壁の下部に小さな開口部を発見した。サビで覆われていたが、中は空洞になっているようだ。
「これだ」
私は爪で錆を削り、開口部を少し広げた。その隙間に体を押し込むと、向こう側に抜けることができた。
「通れるぞ」
ミウとチロも続いて潜り抜けた。私たちの目の前には、薄暗い階段が下へと続いていた。
「下りようか」
「気をつけろよ」チロが警告した。「20年間放置された場所だ。構造が不安定かもしれない」
私たちは慎重に階段を下り始めた。湿った空気と、かすかな金属の匂い。東京のゴミ集積所で嗅いだことのない種類の「古さ」の匂いがした。
階段を降りきると、そこは広い空間だった。天井から吊るされた配管や、巨大なタンク、制御装置らしきものが並んでいる。すべてが埃と錆に覆われていた。
「ここが地下施設か…」
「寒くないね」ミウが気づいた。「地上よりずっと暖かい」
確かに、地下は外の厳寒とは比べものにならないほど温かかった。おそらく、地熱や地下水の影響だろう。
「これは発見だな」チロも感心した様子だ。「厳冬期の避難場所として使えるかもしれん」
私たちは地下施設をさらに探索した。地下水処理用と思われる巨大なフィルター。様々な化学物質のタンク。そして奥には、図面に描かれていた「緊急避難経路」の入口。
しかし、避難経路のドアも固く閉ざされていた。私たちの力では開けられそうにない。
「残念だが、この脱出路は使えないようだな」
「でも、この地下施設自体は大発見よ」ミウが言った。「冬の避難所として最適だわ」
帰り道、私たちは別ルートで地下を探索した。そこで思いがけない発見があった。
「これは…」
壁に埋め込まれた棚には、古い資料ファイルが整然と並んでいた。「廃棄物受入記録」と書かれたラベルが貼られている。
「読んでみろ」チロは促した。
私はファイルを開き、中身を調べた。そこには、この施設で処理された廃棄物の詳細な記録が残されていた。企業名、廃棄物の種類、量、処理方法…。
ページをめくっていくと、あるメモが挟まれていた。手書きのそれは公式記録ではないようだ。
「これを見ろ」
私はそのメモを読み上げた。
「正規ルート外の搬入について。特別枠での受入は全て水銀含有物として記録。実際の内容物は口頭のみで伝達。書類には残さないこと。—— K課長」
「なんだこれは?」ミウが不安そうに尋ねた。
「要するに、公式には記録されていない廃棄物をここに埋めていたということだ」チロは低い声で説明した。「産業廃棄物処理場の闇だな」
「ということは、この地下には未知の物質が埋められているかもしれない」私は思わず周囲を見回した。
「そうかもしれんな」チロは鼻を鳴らした。「人間というのは、自分たちの都合のいいように自然を利用し、都合の悪いものは隠してしまう生き物だ」
私は沈黙した。チロの言葉には苦い真実がある。東京でも、ゴミという形で人間は多くのものを「見えないところ」に捨てていた。
「でも、それが私たちには生きる場所を提供してくれている皮肉」ミウがポツリと言った。
「皮肉だな」私も同意した。「人間が捨てた場所が、私たちの王国になるとは」
---
その日の午後、私たちは事務所棟に戻って、発見したことを整理した。そして、この「廃墟王国」での冬の過ごし方を話し合った。
「まず食料の備蓄だ」私は言った。「東京では日々の調達で十分だったが、ここでは違う。北の冬は長い」
「そうだな」チロも頷いた。「一日に何度も外に出るのは体力の無駄だ。一度に多く集めて、保存する必要がある」
「貯蔵場所は地下がいいわ」ミウが提案した。「温度が安定しているから、食べ物が腐りにくい」
「賛成だ」
私たちは役割分担を決めた。チロは周辺地域の安全なルートを確認する。ミウは保存可能な食料の種類と保存方法を担当。私は外部から「王国」への侵入者を防ぐ防衛策を考える。
「食料調達は三匹で行こう」チロが提案した。「明日、雪が小降りになったら出発する」
翌日、予報通り雪は小休止した。私たちは「王国」を出て、近隣の住宅街へと向かった。目的地は、チロが知っている「ゆるい」ゴミステーション。管理が厳しくない場所だ。
雪の中の移動は想像以上に困難だった。特に私とミウのような細い脚を持つアライグマには。チロのタヌキとしての太い足は、雪の上でもよく沈まなかった。
「こうやって体を左右に振りながら歩くといい」チロは教えてくれた。「体重を分散させるんだ」
彼の教えを試してみると、確かに少し楽になった。
「北海道の動物は皆、冬の歩き方を知っているのね」ミウが感心した。
「当たり前だ」チロは少し誇らしげに言った。「何百年も前から、この地で冬を越してきたんだからな」
「俺たちアライグマは外来種だからな…」私は少し複雑な気持ちで呟いた。
チロは立ち止まり、私を見た。「外来種だからどうした。今ここにいるのは事実だろう。生きる権利はあるさ」
「でも、在来種を脅かすことになるなら…」
「そんなことを言ったら、北海道に住む人間だって外来種と言える」チロは歩き始めた。「縄文文化から続縄文文化、擦文文化へと分岐し、アイヌ文化や本州から伝わった日本文化など様々な文化と人が交わりながら、最終的に現在の北海道の人々になったのだから」
チロの言葉は意外だった。東京で「害獣」と呼ばれることには慣れていた。しかし、実際には全ての生き物が、どこかでは「侵入者」なのかもしれない。
「ほら、ゴミステーションが見えてきたぞ」
住宅街の角に、ネットで覆われたゴミステーションがあった。周囲に人の気配はない。今日は「燃えるゴミの日」だから、食べ物の残りが期待できる。
「さて、どうやって中に入る?」チロが尋ねた。
「簡単さ」
私は慎重にゴミステーションに近づき、ネットの固定部分を調べた。札幌の人間はカラス除けに工夫を凝らしているが、それでもアライグマの器用な手には敵わない。
私は爪を使って固定ピンを外し、ネットの一角を持ち上げた。
「入れるよ」
三匹はすばやくネットの下に潜り込んだ。中には予想通り、燃えるゴミの日らしく食品の残りが豊富だった。
「こっちの袋に惣菜の残りがある」ミウが鋭い嗅覚で見つけた。
「こっちは果物の皮だ」チロも袋を開けて中を覗いた。
私たちは手分けして、食べられるものを探した。東京と違って札幌のゴミは分別が厳格だから、燃えるゴミの袋を集中的に調べる。
「持ち帰れるだけ持ち帰ろう」
私たちは食べられる物を集め、それぞれが運べるだけを持った。あまり欲張ると、途中で落としたり、人間に見つかったりするリスクが高まる。
帰り道、雪が再び降り始めた。視界が悪くなり、足跡も次々と消されていく。
「急ごう」チロが促した。「吹雪になる前に帰らないと危険だ」
私たちは必死で「王国」を目指した。途中、何度か道に迷いそうになったが、チロの嗅覚と経験で何とか正しい方向へ進むことができた。
廃棄物処理場に戻ると、すぐに地下へと降りていった。そこに食料の保管場所を作り、持ち帰ったものを整理した。チロの提案で、種類ごとに分けて保存することにした。
「腐りやすいものから先に食べるんだ」チロは説明した。「果物や野菜の残りは早めに。パンや乾燥したものは後で」
「なるほど、理にかなってるな」私は感心した。
食料の整理が終わると、今度は寝場所の確保だ。地下は暖かいが、床は硬い。私たちは施設内を探索して、使えそうな布や紙を集めた。事務所の引き出しからは古い書類が大量に見つかり、それを細かく裂いて敷き詰めた。
「これで少しは快適になるな」
作業を終えて一息ついたとき、私は窓の外を見た。既に日が落ち始めている。北海道の冬の日は本当に短い。
「なあ、カズナリのことが気になるんだ」私は突然言った。
「あの人間の少年か?」ミウは少し警戒した様子で尋ねた。
「ああ。俺を助けてくれた。今頃どうしているか気になってな」
チロとミウは顔を見合わせた。
「危険だぞ」チロが忠告した。「雪の中、人間の家まで行くのは」
「わかってる。でも、一目だけでも見たい」
私の決意を見て取ったのか、二匹はそれ以上何も言わなかった。
「気をつけろよ」チロがポツリと言った。
「すぐに戻る」私は約束した。
---
カズナリの家までの道のりは、想像以上に過酷だった。日が落ち、気温はさらに下がる。風も強くなり、雪が顔に吹きつける。
「ここで引き返そうか…」
そう思った矢先、見覚えのある住宅が見えてきた。カズナリの家だ。窓の明かりが暖かく灯っている。
私は慎重に近づき、裏庭の木に登った。二階の窓からは、カズナリの部屋が見える。彼は机に向かって何かを描いているようだ。
「何を描いているんだろう」
好奇心に駆られ、私はさらに近づいて窓の外から覗き込んだ。雪が窓ガラスについて見づらいが、彼のスケッチブックに描かれているのは…私だ。
濡れて寒さに震える私の姿を、彼は細部まで丁寧に描き留めていた。色鉛筆で彩色された絵は、その脆弱な瞬間が驚くほど生々しく表現されている。
窓の外の私に気づいたのか、カズナリが顔を上げた。私たちの目が合う。彼は驚いたように目を見開き、それから嬉しそうに微笑んだ。
窓に駆け寄り、開けようとする彼。しかし、私は素早く身を隠した。まだ警戒心が完全には解けていない。
カズナリは窓を少し開け、外を見回した。私が見えないと、彼は少し残念そうな顔をした。しかし、窓辺にリンゴの小片を置くと、再び窓を閉めて机に戻った。
「優しい少年だな…」
私はしばらく木の上で迷った後、決心して窓辺に近づいた。リンゴの香りが鼻をくすぐる。新鮮な果物は、ゴミあさりでは滅多に得られない贅沢だ。
慎重にリンゴを口にした。甘酸っぱい味が口いっぱいに広がる。
カズナリは振り返らずに、何かを書いている。それからそっとスケッチブックをめくり、窓辺に置いた。
彼が再び机に戻ったのを確認してから、私は窓の外からそのページを覗き込んだ。そこには文字が書かれていた。
「また来てね。友達になりたい」
その単純な言葉に、私は胸が熱くなるのを感じた。人間と友達になるなど、東京では考えられなかったことだ。彼らは常に敵か、せいぜい無関心な存在だった。
しかし、このカズナリという少年は違う。彼の目には敵意ではなく、好奇心と優しさがある。
「いつか、もっと近づけるかもしれないな」
そう思いながら、私は木を降り、雪の中を「王国」へと戻り始めた。
「すっかり寒くなったな」
帰り道、空を見上げると星が無数に輝いていた。東京では決して見られない満天の星空。美しいが、その冷たさは容赦ない。
「北の国の美しさと厳しさか…」
私は足早に進んだ。仲間たちが待っている「廃墟王国」へ。雪の下に隠された秘密を抱えた、私たちの新しい家へと。
---
「王国」に戻ると、ミウとチロが心配そうに待っていた。
「遅かったじゃない」ミウが言った。声には心配が混じっている。
「すまない、道に迷った」私は正直に言った。
「カズナリに会えたのか?」チロが尋ねた。
「ああ、窓越しにな」私は今夜のことを二匹に話した。カズナリのスケッチ、リンゴ、そしてメッセージ。
「気をつけるべきだ」チロは警告した。「人間との関わりは、常に危険を伴う」
「わかってる」私は静かに答えた。「でも、彼は違うような気がするんだ」
ミウは何も言わなかったが、彼女の目には理解の色があった。彼女自身、人間との複雑な関係を持っている。首の痕は、その証だ。
「さて、明日からもっと王国の防衛を強化しよう」私は話題を変えた。「食料庫の整備も必要だし、他の動物たちが来た時のためのルールも考えないと」
「ルール?」ミウが首を傾げた。
「ああ。この場所が安全な避難所だと広まれば、他の動物たちも来るだろう。その時、秩序がなければ混乱するだけだ」
チロは感心したように頷いた。「東京者らしい発想だな。北海道の冬は個で生きるには厳しすぎる。共同体の知恵だ」
三匹は遅くまで話し合った。「廃墟王国」の未来について。厳しい北の冬をどう生き抜くか。そして、この地下に眠る謎の廃棄物について。
会話の途中、不意に地下から奇妙な音が聞こえた。
「何の音だ?」
「わからない…」ミウが耳をそばだてた。「水の流れる音のようだけど…」
「調べてみるか?」チロが提案した。
「今日はもう遅い」私は窓の外を指さした。「吹雪が強くなってきた。明日の朝にしよう」
三匹は一旦就寝することにした。私たちの寝床は、集めた紙や布で作った巣だ。狭いが、体温で温まって居心地がいい。
しかし、私の頭の中には次々と考えが浮かんでは消えた。この「王国」の地下に眠る秘密。人間が隠した「闇」。そして、私たちはそれと共存していくしかないという現実。
「俺たちは人間の残したものの上で生きている」
私はミウの寝息を聞きながら思った。それは東京でも同じだった。人間の廃棄物で生き、その影で育つ。私たちアライグマは「文明の影」なのかもしれない。
そして、カズナリという少年の存在。彼は私たちを「害獣」ではなく、一つの生き物として見てくれる。その視線は希望だ。
最後に、地下から聞こえた謎の音が気になった。あれは何だったのか。明日、探索する必要がある。
「北の流儀で生きていくんだ…」
そう呟きながら、私はようやく眠りについた。窓の外では、雪が王国を白く覆い続けていた。
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