第3話 世界最強な学園長様

担任教師に連れられた玲たちが歩くこと数分、入学式の舞台である体育館に着いた。

どうやら玲のクラスは世間一般でいう、1らしく玲たちが座る椅子は最前列に配置されていた。

玲たちが座り、他のクラスの生徒たちがゾロゾロとやってきては、自分たちの後ろの席に座って行く。

足音の鳴った回数から考えるに移動してきたクラスの数は20クラスだった。


多いな‥けれど、あのクラス表を元に考えると、人数が少ない気がする。そうなると、に行われるこの入学式は前半で、午後から残りの生徒の分、後半の入学式があるのかもしれない。そう考えると、恐ろしい人数がこの学園に集められていることになる。まあ、そうでなきゃ「学園の敷地が広すぎて端から端まで目で見渡せない」なんて、馬鹿げた話は出てこないだろうな。


玲が思考を巡らせていると、正面のマイクの前に人が現れる。

「えっ?」

余りにも突然の出来事だったからか、玲の顔はステージの上の人物に釘付けになる


嘘‥いつ出てきた?いくら考え事をしていたからってこの距離で気づかないわけない。


どうやら同様しているのは玲だけではなく、周りの生徒たちも隣の生徒と顔を見合わせたり、目を擦ったりしている


「どうやら少し、驚かせてしまったようだな?」

まるで玲の心を、いや、その場にいる全生徒の心を見透かしたような目で学園長は言う。

「まあ良い、人はもう集まった。少し早いがもう入学式を始めよう」

「我が名は不知火。知っているとは思うが、4英雄の1人にしてを司る権能の持ち主だ。これから4年間、よろしく頼む」

これが何かしらのイベントなら、学園長は黄色い歓声に包まれていたのだろう。けど、そうならなかったのは、学園長の出す圧倒的な魔力のオーラとオーラに込められた学園長の考えが原因だ。

「ここは遊び場ではなく、教育の場所だ」

そんな、どこかの学校で教訓として使われていそうな言葉で。


その後の入学式はトラブルもなく順調に終わり、玲たちは教室に帰るために廊下を歩いていた。


「すごかったな〜学園長の魔力、あんな凄いのを人間が出せるなんて。玲もそう思うだろ?」

隣を歩くルカが呟く。やけにテンションが高いのはルカが不知火、つまり学園長のファンだからだ

「確かにすごかったね。ただ魔力を浴びただけなのに、絶対的な実力差を感じたよ。それに‥」

「それに?」

不自然に言葉を詰まらせる玲を、ルカが疑問の目で見つめる

「僕たちが感じた魔力の圧、あれは学園長の実力の何%なんだろうか?ルカも学園長が全然本気じゃないのは気づいてるだろう?」

「当たり前だろ?入学式で本気出すわけないだろ」

「まあ、それはそうなんだけどさ。それでも異常なまでに手加減してると思うんだ、根拠のない感だけどね」

「ん?玲、急によくわかんないこと言い出すな‥」

「う〜んなんて言うか‥言葉にするのが難しいけど、感じたんだよねだよね。これは小手調べだ、って。それに、なんだか学園長の本気を知っているような気がして。」

玲の説明とも言えない言葉を聞き、ルカは笑う

「まあ、玲の感覚が鋭いのは昔からそうだしな。きっと玲がそう言うならそうなんだろう」

ルカと話していると教室に着き、それぞれ自分の席に座る。

そこからは学園の設備や、各教室の場所などの簡単な学園の説明が始まり、それらも30分程度で終わり、学園初日は平和に終わった‥


なんてことはなく、玲は学園長に呼び出されていた。

担任教師から場所を教えてもらい、歩くこと数分。「学園長室」と書かれた扉を前にして玲は自分の今日の行動を振り返る。

なにか、学園長の目に留まるような事があっただろうか?今朝の人助け?それにしては僕だと特定が早すぎる。それ以外だとするなら本当になんだろうか。もしかして秘密がバレたのか?不自然のないように行動には気をつけていたし、学園長と直接会話をしたわけでもない。いくらを持った英雄でも、視界に入れるだけで相手の状態、もしくは秘密を見抜く‥そんな事が可能なのか?けど、そんな芸当が出来てもおかしくない。

色々考えたはしたけれど、よくわからない。と言うのが玲の結論だった

「おとなしく開けるか」

そう言いながら扉にノックをし、「桂木玲です。入ってもいいですか?」と聞く。するとすぐに「か。入って良いぞ」と声が返ってくる。

覚悟を決めた玲が入るとそこには、椅子に座り、紅茶を飲みながら机に広げている高級そうなお菓子をつまむ学園長の姿があった


「久しぶりだな玲よ。もっとも、覚えているのは我だけだと思うが」







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