くぐつもの

「因果応報」——「縁」と「報い」。
二つが揃って、物事は形作られている。
人と鬼。
陽と陰。
生と死。
相反する二つの縁が交わりし時、この物語は始まった。

まだ魑魅魍魎や怪異が跋扈する江戸時代の日本。
鬼狩りを生業とする士（ツカサ）は、江戸から百里ほど離れた水舟で鬼の噂を耳にする。
噂される場所へ赴くと、そこで術師と名乗る男と出会う。彼こそ、当代最強と噂されている術師・調宮要人（ツキノミヤ　カナト）であるが、彼はどうやら士を知っているようで——。

十年前、常世の王・不浄鬼によって心臓を奪われた少女は、生きる屍＝「傀もの（くぐつもの）」にされてしまった。
私は何者か。自らに秘められた真実を求めて途方もない時を旅する、人と鬼の間で揺れる傀ものの物語。


［第1章 登場人物］
・士（ツカサ）…続きを読む